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施行から1年、いまさら聞けない「働き方改革」とは? 「働きやすくなった」は2割

働き方改革関連法が施行されてから約1年。2020年4月にはいよいよ中小企業を対象にした時間外労働の上限規制が適用されます。残業時間は上限が月45時間、年360時間が原則となり、それを超えて働かせた企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい罰則が与えられることになります。

サーブコープは中小企業の正社員400人にアンケート調査を実施。4回シリーズにわたって、中小企業における働き方改革の実態をお伝えします。初回は、働き方改革関連法施行後、「働きやすくなった」と回答した人は2割強にとどまった結果と理由を紹介。また、働き方改革関連法の概要を分かりやすく解説します。

働き方は変わった? 2割が「働きやすくなった」、7割弱が「ほとんど変化を感じない」

 中小企業の正社員400人に働き方改革以降、働きやすくなったと感じるかを聞いたところ、最多の66.3%が「ほとんど変化を感じない」と回答。「働きやすくなった」は22.0%、「働きにくくなった」は11.8%という結果になりました。次に、それぞれの回答に寄せられた意見をご紹介します。

 

「働きやすくなった」(22.0%)と回答した人のコメントをみると、2019年4月から中小企業にも義務付けられた「年5日の年次有給休暇の確実な取得」を評価する声が多数寄せられました。

6割強と回答率が最も高かった「ほとんど変化を感じない」(66.3%)と答えた人たちはどうでしょうか。単純に「変わった実感がない」と回答した人がほとんどでしたが、約1割は「もともと働きやすかった」という楽観的な意見で、もう1割は「忙しさと残業の量は何も変わらない」という悲観的な意見に分かれました。

そして、「働きにくくなった」(11.8%)と答えた人はもちろん批判的な意見がほとんど。形だけの働き方改革により「サービス残業」と「給料削減」が起きているといった内容が寄せられました。

働き方改革「なんとなく理解している」が約6割

また、同じアンケートの中で働き方改革への理解度についても聞きました。最多の58.5%が働き方改革を「なんとなく理解している」と回答し、「あまり理解していないと思う」が28.0%で二番目に多く、「詳しく理解している」は8.0%、「まったく理解していない」が5.5%でした。

働き方改革関連法などは、今も順次施行されているまっただ中で、働く側だけではなく企業の側も、「何から対応したらよいのか分からない」「具体的に何をすればよいか分からない」と、混乱しているところも少なくありません。そもそも働き方改革とは改めて何なのか、詳しくみていきましょう。

なぜ、働き方改革が必要なのか

なぜ今、大企業から中小企業まで、働き方改革が必要とされているのでしょうか。大きな背景としては、少子高齢化による労働人口の減少があります。

厚生労働省が発表した、2019年の人口動態統計の年間推計では、日本人の国内出生数は86万4千人となり、1899年の統計開始以降初めて、90万人を下回りました。今もなお、少子化・人口減が進んでいます。

それに伴って、労働人口も減り続けています。厚生労働省「労働力需給推計」によると、これから先、経済成長と労働参加が進まない場合、2040年には、就業者の数が2017年に比べて約1300万人も減ると予測されています。

このような中、日本の企業、とりわけ中小企業は、深刻な人手不足に直面しています。

人手不足を解消するには、働きやすく魅力的な職場をつくり、人材を確保する必要があります。また、健康的に働ける環境を整えることで、一人ひとりの仕事の生産性を高めることも重要です。

そして、バブル崩壊やリーマンショックによる不景気などで、「正社員=安定・安泰」という終身雇用神話が崩れ、多様な働き方が推奨されるようになったことで、企業も人手不足解消のために、幅広い雇用形態を認めるようになりました。

こうした動きを国が法改正や補助金などで後押しするのが、働き方改革です。

働き方改革、3つの目的とは?

働き方改革とは、簡単にまとめると、働く人がどんどん減っている今、国全体で、働く人を増やし、一人ひとりの生産力を上げようという目的で進められる、さまざまな取り組みのことです。

働きたい人が性別、年齢、生活環境に左右されず、正当な給料をもらい、健康で高いモチベーションを持って働ける環境をつくろうというものですが、具体的な取り組みとしては、大きく3つに分けることができます。

① 労働時間・労働条件の是正

② 正規と非正規の待遇差の改善

③ 働きやすさの実現

労働時間・労働条件の是正

労働時間・労働条件の是正は、行き過ぎた残業などの長時間労働を見直し、働き過ぎによって心や身体の健康を損なわないようにするための取り組みです。

正規と非正規の待遇差の改善(同一労働同一賃金)

正規と非正規の待遇差の改善は、近年増加した派遣労働者やパートタイム労働者などのいわゆる非正規社員が、給料や労働条件で、正社員に比べて不合理な待遇差がないようにする取り組みです。巷では、「同一労働同一賃金」ともいわれます。

働きやすさの実現

働きやすさの実現は、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメント(セクハラ)を防止したり、テレワークや副業を解禁したりするなど、性別や生活環境などに関わらず、すべての人が働きやすい環境を整える取り組みです。

 

このうち、労働時間・労働条件の是正や、正規と非正規の待遇差の改善などをカバーしているのが、2019年4月から施行されている働き方改革関連法です。働きやすさの実現については、働き方改革関連法では直接的にカバーされてはいませんが、その他の法律や、国のガイドラインなどで推奨されています。

働き方改革の全体像と具体的な取り組みを、図で表してみると、次のようなイメージになります。

働き方改革関連法|主な10の取り組みを解説

働き方改革関連法は大企業か中小企業かで、それぞれ実施時期が異なります。実施時期と取り組みの中身を整理してみましょう。

労働時間・労働条件の是正

時間外労働の上限規制

大企業|2019年4月1日施行 中小企業|2020年4月1日適用

残業時間は原則、上限が月45時間、年360時間となり、それを超えて働かせた企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい罰則が与えられます。

デパートの年末年始商戦といった繁忙期などの特別な事情があっても、年720時間、単月100時間未満、2~6カ月平均で月80時間以内(休日労働を含む)が限度となります

なお、新技術・新商品等の研究開発の業務に従事する労働者については、上限規制の適用が除外されます。また、自動車運転の業務に従事する労働者などは、2024年3月31日まで、上限規制の適用は免除されます。

 

中小企業に対する割増賃金率の猶予措置廃止

大企業|なし 中小企業|2023年4月1日施行

社員に時間外労働、深夜労働、休日労働を命じる場合、企業は通常の賃金に割増賃金を上乗せして支払わなければなりません。現在、中小企業には、社員に月60時間超の時間外労働を命じる場合、割増賃金について「割増率25%を超える努力義務」が課されていますが、2023年4月1日以降は、「割増率50%以上」の割増賃金の支払いが義務になるというものです。

ちなみに、50%以上の割増率のうち、25%については割増賃金の代わりに代替休暇を付与することもできます。違反をした中小企業は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金という厳しい罰則が与えられます。

時季を指定した年次有給休暇の付与

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

10日以上の年次有給休暇(年休)を付与された労働者に対して、企業は年休を毎年5日間は必ず消化させて、しっかり休日を取らせなければならないという取り組みです。

企業は5日間の年休を、時季を指定して1年間のうちに消化させなければならず、実現できない場合には30万円以下の罰金が科されます。正社員だけでなく、所定労働時間・所定労働日数次第で、パート等も時季指定義務の対象になります。

企業が時季を指定する際は、労働者の意見をしっかり聞き、できるだけ社員の希望に沿った取得時季になるように努めなければなりません。ただし、人手不足の中小企業では、周囲に迷惑がかかるからと、年休の取得をためらう人が少なくありません。

そのため、労働者が年休を取得しやすいように、企業があらかじめ年休の取得日を決め、計画的に取得させる計画的付与を行うことができます。年末年始やゴールデンウィークとくっつけて、大型連休を取らせるといったケースが多いようです。

 

フレックスタイム制の清算期間の延長

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

フレックスタイム制は、一定期間(清算期間)の総労働時間を定め、労働者がその範囲内で各日の始業・終業時刻を自由に決めて働くことができる制度です。

2019年4月から、この清算期間の上限が、3カ月に延長されました。清算期間を1カ月超3カ月以内に設定する場合、1カ月ごとの労働時間が週平均50時間以内清算期間全体の労働時間が週平均40時間以内になるようにしなければなりません。

これらの時間を超えた場合、企業は労働者に割増賃金を支払う必要があります。

高度プロフェッショナル制度の新設

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

年収が1075万円以上の労働者が、高度な専門的知識を必要とする業務に従事する場合、労働基準法の労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定適用が除外されるようになりました。

簡単にいえば、労働時間ではなく成果で評価されるようになるというものです。成果さえ出せば少ない労働時間でも相応の報酬を得られる一方、企業側が高い成果設定をしてしまうと、残業代なしで長時間労働に従事することになるといったデメリットも指摘されています。

なお、高度な専門的知識を必要とする業務の対象になるのは、金融商品の開発業務・ディーリング(売買)業務・アナリスト業務、コンサルタント(相談)業務などといわれます。

 

勤務間インターバル制度の普及促進等

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

企業側は労働者が身体を壊さないように、仕事が終わった時間から次の仕事が始まるまでの間に、一定の休息時間を設けるよう努力しなければならなくなります。

努力義務のため、休息時間に決まりはありませんが、すでに実施している企業では、8時間以上に設定しているところが多いようです。

また、労働時間の改善を図るため、企業は他の企業との取引において、短納期発注や発注内容などの頻繁な変更を行わないよう配慮することが、努力義務として設けられました。

 

医師による面接指導の強化

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申し出があった場合、医師による面接指導を実施することが義務化されました。

医師の面接指導に当たって、企業はすべての労働者の労働時間を、タイムカードや自己申告によって把握しなければなりません。医師の面接指導後は、医師の意見を踏まえて、必要に応じて働く場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減少などの措置を講じなければなりません。

違反した場合、企業には50万円以下の罰金が科されます。

産業医・産業保健機能の強化

大企業・中小企業|2019年4月1日施行

もともと、労働者が常に50人以上いる事業場には、必ず産業医を設置しなければなりません。働き方改革関連法では、この産業医の存在や業務内容を、企業の中のみやすい場所に掲示して、労働者が産業医に相談しやすい環境を整えることが求められます。

また、企業は、「1カ月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えた労働者の氏名と、その超過時間に関する情報」といった、産業医が労働者の健康管理をするために必要な情報を提供しなければなりません。

 

2)正規と非正規の待遇差の改善(同一労働同一賃金)

⑨ 不合理な待遇差の解消

大企業|2020年4月1日施行 中小企業|一部2021年4月1日適用

企業は、給料などの待遇について、正社員と非正規社員の間に、正当な理由なく不合理な待遇差を設けてはなりません

非正規社員が、正社員と職務内容が同じで、同じ責任を持たされているのに、時給が正社員より安い、通勤手当が支給されない、食堂や休憩室が利用できないなどの待遇差がある場合、企業はその待遇差を改善しなければなりません。

また、正社員と非正規社員で職務内容などが違ったとしても、「同じ電車通勤なのに、正社員には通勤手当を支払い、パート等には支払わない」というのは、不合理な待遇差とみなされます。

 

⑩ 待遇に関する説明の義務化

大企業|2020年4月1日施行 中小企業|一部2021年4月1日適用

企業は、非正規社員から待遇差などに関して説明を求められた場合、正社員との待遇の違いとその理由などを、しっかり説明しなければなりません。

 

その他の法律や推奨されている取り組みとは?

働き方改革関連法としてはカバーされていませんが、さまざまな法律やガイドラインなどで、国が積極的に推奨している取り組みもあります。そのいくつかをみてみましょう。

ハラスメントの防止

施行は公布日から1年以内の政令で定める日。ただし、中小企業については、公布日から3年以内の政令で定める日までは努力義務

2019年6月、職場におけるハラスメント対策の強化を柱とした、労働施策総合推進法等の改正法が公布されました。これにより、セクシャルハラスメント(セクハラ)、マタニティーハラスメント(マタハラ)に加え、パワーハラスメント(パワハラ)に対しても、防止対策を講じることが企業に義務付けられました

具体的には、労働者からのハラスメント相談窓口の設置や、相談があったときの事実確認、ハラスメント行為者の処分や再発防止策の検討などを行わなければなりません。

また、企業は、労働者がハラスメントに関する相談を行ったことや、相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、解雇など不利益な取り扱いをしてはいけません。

テレワークの導入

テレワークについては、企業に導入を促したり、導入の仕方を定めたりするような法律は今のところありません。

しかし、国はテレワークも働き方改革の柱の一つと位置づけており、2018年2月に厚生労働省が「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を公表して、テレワークを導入・実施する場合の留意点を解説したり、テレワークに取り組む企業に助成金を出したりといった形で後押ししています。

企業の中でも、例えば、子育て中の女性社員が、子どもが熱を出してもテレワークをしながら会議に出席できるようIT機器を整えるなど、柔軟な働き方実現のためにテレワークを導入するところが増えています。

副業・兼業の解禁

「収入を増やしたい」「自分のやりたい仕事に就きたい」といった理由から、副業・兼業を希望する労働者が増加しています。現状では、副業・兼業を禁止している企業がまだ多いですが、人材の確保・定着のために、副業・兼業の解禁に踏み切る企業も出てきています

2018年1月には、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、企業や労働者が現行法令の下でどのような点に留意すべきかなどをまとめています。

この他にも女性が活躍できる環境整備、高齢者の就業支援、障害者就労の推進、外国人材の受け入れなど雇用をめぐるダイバーシティの推進に取り組む企業も増えています。
ここでは、複雑で多種多様な働き方改革の取り組みについて、押さえておきたい重要なポイントを紹介しました。自分の属する企業や、日本全体の労働環境がどのように変わっていくのかを考える参考にしてみてください。

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<調査概要>
調査タイトル:働き方改革についてのアンケート調査
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2020年1月22日〜1月29日
調査対象:従業員数300名未満の企業に勤める20~69歳の男女400名

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