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新型コロナを生き抜く経営とは? 中小企業診断士が5つの対策をアドバイス

新型コロナウイルス感染拡大による経済の停滞は深刻さを増しています。感染する前に経済的な行き詰まりで倒れてしまう、という声も聞こえてきます。帝国データバンクによると2020年6月1日時点の感染症関連の倒産件数は全国で202件。そのほとんどが中小・零細企業です。

中小企業の経営者が今後を生き抜くために、今できることとは? 中小企業診断士として6年、中小企業経営者の支援に取り組んできた中郡久雄さんに、今すぐできる5つの対策や活用できる制度についてうかがいました。

中小企業経営者が直面している不安とは?

今後は当分の間、コロナと共存する「With Corona(ウィズコロナ)」の世界が続きます。2019年10月の消費増税とあいまって、経済の停滞はしばらく続くと考えておかなくてはいけません。そんな中で今、中小企業経営者が取っておくべき対策とは何でしょうか。私や私の中小企業診断士の仲間に寄せられた相談をもとに、考えてみたいと思います。

中小企業の経営者が最も不安に感じているのは、次の3点にほぼ集約できます。

資金繰り

ホテルや飲食店など、自粛を余儀なくされた事業者の多くはいわゆる「日銭商売」と呼ばれる業種に属し、日々の売り上げが即現金になり、それを次の仕入れや固定費にあてています。そのため、普段は手元に多くの現金を持つ必要はありませんが、現在のような事態で売り上げが止まってしまえば、すぐに支払いに支障をきたします。営業が止まっている分、売り物の仕入れはなくなりますが、家賃や人件費をはじめとする固定費は店を閉めても発生します。

また、製造業や建設業についても今後、資金繰りが厳しくなっていくと予想されます。すでに納品や受注が済んでいた案件もあるため3、4月はこの時点で大幅な売り上げの減少を避けられた企業が多かったようですが、4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大して以降、受注の数は大きく減少しています。5月以降の売り上げ減は避けられず、今後の資金繰りの目途が立っていない企業が出始めています。

先が見えない

リーマンショックや東日本大震災を経験した経営者が話すには、新型コロナウイルスによる影響が一番大きく、精神的にもきついと言います。その理由はこの感染症がいつ収束するか誰もわからないなかで、「どこまで頑張ればいいのかゴールが見えない」ためです。

5月25日に緊急事態宣言は解除されましたが、今後感染の第2波、第3波がやってくると予想されています。となると、コロナ前と同じ消費が戻ってくるとは考えにくく、終わりの見えない闘いが経営者を疲弊させていくのではないかと懸念します。

公的支援の動きが遅い

もちろん、国や地方自治体も経営者の不安を解消できるようにと数々の支援策を打ち出しています。行政も初めて経験する事態のため、現場で混乱が起きるのは仕方がないでしょう。ただ現実として、今すぐにでも現金が必要となる人のところにお金が届いていない現状があります。

3月末、エヌエヌ生命保険が中小企業約7,000社を対象に「いつまでに新型コロナウイルスが収束すれば経営的に乗り切れるか」を調査。それによると、4月末が20.3%、5月末が16.6%、6月末が15.5%でした。つまり、6月末までに感染症が収束しなければ経営が乗り切れないと回答した企業がほぼ6割にのぼったのです。

公的支援が行き渡るのを待っていては手遅れになってしまいます。では、中小企業経営者が今できることや、やるべき対策とは何なのか解説します。

中小企業経営者が今すぐやるべき5つの対策

休業・廃業・継続を決める

会社をこれからどうしていきたいかをまず決めましょう。事業を継続させることがすべてではありません。

公的支援策は事業の継続を前提とした施策になります。周囲の雰囲気も「継続が善」となりがちで、そうした空気に流されて廃業を決意できない方もいるようです。しかし、置かれている状況は個々の企業によって異なります。例えば廃業して資産を処分すれば取引先にあまり迷惑を掛けることなく、また借入金もそれほど残らない場合は、休業・廃業するのも選択肢の一つです。そして、傷が小さなうちに撤退できれば、再起の機会を早めにつかむことも可能になります。

自社の状況を冷静に把握して、周囲の空気に流されることなく、会社の進退を決めていきましょう。

倒産を防ぐために必要な資金を把握する

経営の継続を決意したら、何を差し置いても「手元の現預金」を確保することを考えましょう。手元に現預金があれば会社は潰れません。どんなに赤字になっても、現金がある限り倒産はしないのです。会社は赤字だから倒産するのではなく、赤字がかさんで新規の資金調達ができなくなり、手元の資金がなくなった結果、倒産します。

では、どのくらいの資金を確保すればいいのでしょうか。業種やそれぞれの企業が置かれている立場で変わってきますが、一つの目安として用いられる指数は「現預金月商比率(現預金と1か月の売上高の比率)」です。

現預金月商比率

一般的に現預金月商比率は、中小企業で150%(1.5か月)、資金調達力のある大企業で100%(1か月分)くらいを目安にするといいと言われています。ただし中小企業では、売り上げの変動や売掛金が回収できない場合に影響を受けやすいため、200%以上あった方が安全だと言う人もいます。

今まさに「売り上げが変動し、売掛金が回収できないかもしれない」事態に直面しているわけです。より高い現預金月商比率を目安にすることは間違いではありません。

さらに言えば、「売り上げが(減少方向に)変動」してしまっている今、月商(≒平均月間売上高)を使った指数を目安にしていいのかとの疑問もあります。そこで、よりおすすめしたいのが「現預金固定費カバー月数」を指標に使うことです。

現預金固定費カバー月数

現預金固定費カバー月数とは、現在保有する現預金だけで「何か月分の固定費をカバーできるのか」を示す指数です。つまり売り上げがゼロになった場合、何か月間、存続できるかを計る数字です。

何か月分あれば絶対安心だ、という明確な指標数字があるわけではありません。通常は「現在の危機状況から脱すると想定される期間」よりも長い月数を目標にすると良いと言われていますが、新型コロナウイルスの問題はいつ収束して危機状況から脱することができるかわからないから困っているわけです。

ただ、緊急事態宣言も解除され、少しずつですが経済も動き始めていることを考えると、少なくとも3か月、できれば6か月確保を目指したいところです。これだけあれば、事態がどのように変化しても、ある程度安心して対処していけるのではないでしょうか。

「そんな多額の資金を調達できるのか」

そう思われる方が多いかもしれません。正直、平時では難しいと思います。しかし、今は非常時です。普段とは違う形で資金を確保する道があります。以下、簡単にその方法をご紹介します。

最大限の借り入れを検討する

「借金は後で返済しなければならないので、できれば避けたい。なるべく必要最小限にとどめておいた方が、後で借金返済に苦しむリスクを抑えられる」。

融資を受けましょうと勧めると、このような回答がよく寄せられます。正論のように思えるかもしれませんが、これは平時の考え方です。

現在のような非常時には別な考え方が必要になります。借り入れ以外の方策があるなら別ですが、そうでなければまずは借り入れをしてでも資金を確保しましょう。資金調達ができなければ借金返済に苦しむ前に会社が潰れてしまいます。

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(商工中金)などの政府系金融機関では「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が実施されています。一定の条件(最近1か月の売上高が前年または前々年同期に比し5%以上減少していることまたはこれと同様の状況にあること)を満たせば、3年間実質無利子・無担保での借り入れが可能になっています。

ただ、政府系金融機関の窓口は混み合っており、融資の実行には最低でも1か月はかかるのが現状。民間金融機関でも5月から、都道府県等による制度融資を活用して、3年間実質無利子・無担保での貸し出しが可能になりました。

「セーフティネット保証4号・5号」「危機関連保証」

民間金融機関からの借り入れに際しては、信用保証協会からの保証を求められる場合も多いと思いますが、その点も、「セーフティネット保証4号・5号」や「危機関連保証」など、新型コロナウイルス感染症による影響に対応する保証が行われています。

現状は非常に融資を受けやすい環境が整ってきています。自社の状況を見て、使える制度を考えて、最大限の借り入れを検討してみてください。

小規模事業者・中小企業向け「新型コロナウイルス対策」支援制度まとめ

納付猶予制度を活用する

「入」を確保したら次は「出」を検討していきます。一般的な意味での「経費削減」を考えるのはもちろんですが、他にも検討できる仕組みは用意されています。

税金や社会保険料の納付猶予を活用

国税については、所轄の税務署に申請すれば、納期限から1年間、納税の猶予が認められます。猶予期間中の延滞税は全額免除されますし、その間の担保の提供は不要です。

社会保険料についても同様の仕組みができており、所轄の年金事務所に申請すると厚生年金保険料の納付期限から1年間猶予され、その間の延滞金は全額免除となります。

もちろん、今般の新型コロナウイルス感染症により経営状況等に影響があるとの条件はつきます。しかし、今般影響を受けていない事業者はほとんどいないでしょうし、もし影響を受けていなければ、この仕組みを使おうと考えないでしょう。つまり、ほとんどの事業者は猶予が認められるはずです。

税金や社会保険料を滞納するのは抵抗があると思う方もいるかもしれません。しかしこれは滞納ではなく国が正式に認めている「猶予」です。資金繰りに少しでも不安があるなら、税務署や年金事務所に相談だけでもしてみることをおすすめします。

給付金を申請する

国や都道府県・市町村に給付金を申請しましょう。本来であればこれが一番に来るべきですが、すでに書いたとおり、公的支援の動き、特に国から直接給付される部分については手続きが遅れています。ですが、申請はしっかり行いましょう。

持続化給付金

「持続化給付金」は、月間事業収入が前年同月比50%以下になった場合、最大で200万円の給付が受けられる制度です。申請の受付は始まっており、すでに給付を受けた事業者の方もたくさんいます。

 

感染拡大防止協力金

また、東京都は休業要請等に協力した中小事業者に「感染拡大防止協力金」を支給しています。県によって仕組みは違いますが、それぞれの県で似たような給付が行われていますから、該当する場合は、必ず調べてください。

雇用調整助成金

雇用維持の観点からは、「雇用調整助成金」の制度があります。これは、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を一時的に休業させて雇用の維持を図った場合、支払った休業手当等の一部(一定の要件を満たす場合は全部)を国が助成する制度です。新型コロナウイルスの影響による場合の特例もあり、上限額が引き上げられています(8,330円/1日から15,000円/1日)

さらに、第二次補正予算に「家賃支援給付金」が入りました。補正予算が成立すれば懸案とされてきた家賃支援についても動き始めています。

公的支援の動きが遅いと書いてきましたが、逆に言えば、これから新たな支援策が出てくる可能性もあります。条件に当てはまるものがあればきちんと申請し、受け取りましょう。給付金については返済義務がありませんし、使い道に制約もありません。借り入れの返済や、猶予された税金や社会保険料の納付の原資としても使うことができます。

まとめ

誰もが経験していない事態が起きています。これからどうなっていくか誰にも予想ができない状況では、何より「手元現金を厚くする」ことが大切だと私は考えています。

もちろん、将来の計画、「With Corona(ウィズコロナ)」の時代に自分たちはどんな事業をしていくのか、戦略を考えておくのも大事です。戦略なくして未来は切り開けないでしょう。しかし、戦略を実行していくためには、会社で働いてくれている人、会社が持つ資産、会社が築いてきた信用、といったものが残っていなくてはいけません。戦略を実行するために必要な「ヒト・モノ・カンバン」を守るためにも、「カネ」つまり資金の確保は欠かせないのです。

「会社を続ける」と決めた以上、絶対に潰さない覚悟が何より大切です。会社が一つ無くなるのは、経営者だけの問題ではありません。働いている人はむろんのこと、取引先にも取引先で働いている人にも影響を与え、それがどこまでも連鎖していくのです。

ありとあらゆる使える手段を使って会社を存続させ、この経済危機を乗り越え、新しい発展をしていく。一つでも多くの中小企業がそうあって欲しいと願っています。

 

経済産業省のホームページを常に確認しておきましょう。「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」には、他の省庁が主管である施策もすべて掲載されています。新しい施策が打ち出される度に更新されているので、活用してください。


文・中郡久雄

2013年、中小企業診断士資格を取得。中小企業の経営支援、事業承継支援や地域活性化を目指すNPO法人を支援。中小企業診断士(経済産業大臣登録)、事業承継マネージャー(金融検定協会認定)、印刷会社経理担当、インタビューライター。https://note.com/h_chugun

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