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2019年10月実施の【消費税増税】|メリットやデメリットは? 軽減税率も解説|いまさら聞けない時事問題 Vol.3

公開日 2019.09.18 更新日 2023.07.12

日本では敬遠されがちな時事問題ですが、社会の動向はビジネスにも影響します。忙しいビジネスパーソンのために、いまさら聞けない時事問題を分かりやすく解説するシリーズ。Vol.3は2019年10月に実施された「消費税増税」を取り上げます。

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政府は景気を鑑み過去2度にわたって延期してきた8%から10%の増税を2019年10月に実施しました。そもそもなぜ消費増税が必要なのか、メリットやデメリットは?また、景気対策として導入される軽減税率とは何か。改めて論点を整理していきましょう。

そもそも、なぜ増税が必要なの?

消費税率の引上げ分は、すべての世代を対象とする社会保障のために使われます

少子高齢化が進むなかで増え続ける社会保障費。政府は増税する理由を「年金、医療、介護、子育て」など、全世代型の社会保障の安定と充実を図るための財源確保とし、見込まれる税収増は約5兆6000億円とされています。

増税後のメリットとデメリットは?

どんな政策にも当然メリットとデメリットを見いだすことができますが、今回は幅広い立場の専門家が、増税の影響を懸念しています。過去のケースを振り返りながら、増税による影響について確認していきましょう。

増税するメリット

① 安定した税収が見込める

消費増税のメリットは、安定的な税収を確保できることにあります。税収の多くを占めるのは所得税、法人税、そして消費税ですが、景気に左右されやすい所得税や法人税とは違い、消費税は一定の税収が見込めます

② 地方税収の安定にもつながる

消費税は国税部分と地方税部分に分かれ、10%のうち2.2%分の税収は、国ではなく県や市町村に還元されます。そのため、人口減少や高齢化により税収が厳しい地域でも税収を維持しやすいというメリットがあります。

③ 現役世代の負担を軽減する

所得税や法人税は、いわゆる「現役世代」から徴収する税金ですが、消費税は全世代から徴収する税です。「消費税」「所得税」「法人税」の主要3税を比較したとき、相対的に、現役世代の負担を軽減する結果にもなります。(「応能負担」については次の項で解説)

増税後のデメリット

① 景気悪化とデフレ悪化

今も続いているデフレの長期化は、1997年に3%から5%へ消費税が増税されたことが引き金になったと言われています。2014年に8%へ増税したときも個人の「買い控え」が起きて消費が冷え込み、以来家計の支出消費もマイナスを記録し続けています。日本のGDP (国内総生産)成長率の約50%は家計による消費なので、ここが停滞すると経済の成長は見込めず、本格的なデフレ悪化を招くと指摘されています。

② 中小企業を圧迫する

過去の増税でも、厳しい立場に立たされたのは中小企業でした。激化する安売り競争のなか、増税分を売値に上乗せできない小売業や下請けが多く、増税分は自腹を切るはめに。結果、消費税を滞納する中小企業も少なくありませんでした。不透明な世界経済により、外需に期待できない状況での増税は、中小企業の倒産や廃業を招き、賃金抑制や雇用不安を招くと懸念されています。日本の場合、全企業数の99%以上が中小企業。それだけ社会的影響は大きくなります。

③低所得者への負担がさらに重くなる

消費税は全世代から徴収できる公平な税金とも言われていますが、もともと税制というのは、所得に応じて税を負担する「応能負担」が原則。消費税は所得が高くても低くても同じ税率なので、所得が低い人ほど税負担が重くなる矛盾が起きています。厚生労働省が今年7月に発表した「国民生活基礎調査」では、調査した世帯の57%が「生活が苦しい」と回答しており、今回の増税の影響が懸念されています。


 軽減税率を分かりやすく解説

そこで、「低所得者への経済的な配慮」を目的に政府が導入するのが「軽減税率」ですが、ここではその複雑で分かりにくい対象範囲を解説します。

出典:国税庁「令和元年10月1日から消費税の軽減税率制度を実施」

酒類・外食を除く飲食料品と週2回以上発行される新聞の消費税は8%に据え置き。軽減税率が適用されるのはスーパーやコンビニで買えるお弁当や生鮮食品、乳製品、ソフトドリンクといった飲食料品がメインで、コンビニでもイートインスペースなどで食べる場合は外食とみなされ、10%の消費税が適用されます。また、ファストフード店やピザのデリバリーなどといった飲食物は外食にあたらないので、こちらも軽減税率が適用されます。

しかし、ミネラルウォーターは8%据え置きですが、水道水は飲料以外にも洗濯などの生活用水が混在しているため10%。しょうゆや塩なども軽減税率の対象になりますが、アルコール度数1%以上のみりんや料理酒は軽減税率の対象外で10%。

おもちゃ付きのお菓子やマグカップ付きのコーヒー豆など、いわゆる「一体資産」と呼ばれる商品は、軽減税率の対象になるものとならないもので分かれます。その判断基準は、商品価格(税抜)で1万円以下、かつ食品の値段が全体の3分の2以上を占める場合にのみ軽減税率が対象になるというもので、それに該当しない場合は標準税率の10%となります。

軽減税率の対象範囲があまりに複雑なので、消費者だけでなく、小売側の店舗でも導入直後は混乱を招きそうです。実は軽減税率制度の導入に必要なのは1兆円。これまで免税されていた事業者への課税やたばこ税の増収分、社会保障費の歳出見直しなどにより財源を確保すると言われています。

ポイント還元や「複数税率対応レジ」補助金の活用を

いかがでしたか。各家庭では増税前に大きな買い物を済ませたり、増税に伴い実施されるキャッシュレス決済のポイント還元を利用したり、家計の見直しをするなどの対策が必要になりそうです。

また中小企業庁は、8%と10%の2種類の税率に対応できる「複数税率対応レジ」の導入費用を補助しているので、中小小売事業者の皆さんはこうした制度も積極的に利用しましょう。


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取材協力・神奈川新聞経済部記者 田崎基(たさき・もとい) 1978年横浜生まれ。2008年神奈川新聞入社、経済部、報道部、デジタル編集部を経て18年11月から経済部キャップに。

 

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