法人化(法人成り)とは?個人事業主が法人化するメリット・デメリットやタイミングを解説

個人事業主として順調に事業が拡大していくと、次のステップとして気になってくるのが事業の法人化です。本記事では、法人化(法人成り:ほうじんなり)の基本情報をはじめ、メリット・デメリット、法人化に適したタイミングや手続きの流れまでわかりやすく解説します。法人化を検討している個人事業主の方はぜひ参考にしてください。
法人化(法人成り)とは?

法人化(法人成り)とは、個人事業主が必要な手続きを行い、法人格を持つ事業体となることです。基本的には、個人事業主として営んでいた事業を法人がそのまま継承する形となり、これまで蓄えた預金や売掛金といった資産、または負債も引き継ぎます。
なお、「法人化」と新規に会社を立ち上げる「法人設立」は別物です。法人化は事業や資産・負債のある状態でスタートするのに対し、法人設立はこれまでの事業を引き継がず、資本金以外はゼロからのスタートになります。事業内容や事業規模、収益状況、顧客との関係性などを踏まえ、新たに法人を設立するか、個人事業を継承して法人成りするかを検討する必要があります。
法人化で選べる会社の形態
法人化をする際に選べる会社の形態は、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類です。それぞれ資本金の金額や出資者の責任の範囲、役員の任期などが異なります。主な違いは以下のとおりです。
| 株式会社 | 合同会社 | 合資会社 | 合名会社 | |
|---|---|---|---|---|
| 資本金 | 1円から | 1円から | 任意 | 任意 |
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 無限・有限責任 | 無限責任 |
| 株式上場 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 役員の任期 | 最長10年 | 任期はなし | 任期はなし | 任期はなし |
最も多い会社形態は株式会社です。株式も発行できるため、他の形態と比べて資金を集める手段が多くなります。
2006年に新しく生まれた形態の合同会社は、出資者と経営者が同一であることや、設立費用が株式会社と比べて安価なことなどが特徴で、近年設立件数が増加しつつあります。合同会社について詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参照してください。
法人と個人事業主の違い
法人と個人事業主の違いを下表にまとめました。
| (営利)法人 | 個人事業主 | |
|---|---|---|
| 開業時の手続き | 法務局に法人登記を申請 ※定款の作成や申請時に必要な書類の準備も行う | 税務署に開業届を提出 |
| 開業時の費用 | 6万円以上 ※会社形態によって異なる | 無料 |
| 税金 |
|
|
| 社会保険負担 | あり | なし (従業員が5人未満の場合) |
| 経費の範囲 | 個人事業主と比べ広い | 法人と比べ狭い |
| 赤字の繰り越し | 10年 | 青色申告時は3年 |
| 社会的信用 | 高い | 法人と比べて低い場合がある |
法人と個人事業主は開業時の費用や社会保険の義務、税金の種類、経費の範囲などに大きな違いがあります。事業の目的や規模などを踏まえ、より有利な形態を選ぶことが大切です。
個人事業主が法人化(法人成り)するメリット

個人事業主が法人化(法人成り)するメリットとして、主に以下の7つが挙げられます。
節税対策ができる
法人化の代表的なメリットは節税対策ができることです。
個人事業主が支払う所得税は、金額が多いほど税率が高くなる「累進課税」で、最高税率が45%(4,000万円以上)となっています。さらに、事業の種類によっては所得が290万円を超えると、3~5%の個人事業税が課されます。
一方、法人が国税として支払う法人税は、税率が一定の「比例税率」が適用される仕組みです。法人税の税率の上限は23.20%で、資本金1億以下の法人の場合、年800万以下の部分は15%~19%となります。
また、法人成り後2年という時限的効果ではありますが、消費税についても節税効果が期待できます。「課税売上高が1,000万円未満」の法人は、事業開始後2年間、消費税の納付義務のない免税事業者となります。これは、消費税を算出するための基準期間である前年度・前々年度の課税売上高がないためです。
ただし、適格請求書発行事業者として登録すると、消費税の免税を受けることはできません。取引先に課税事業者が多く、適格請求書を求められる場合は注意が必要です。
参考:No.2260 所得税の税率|国税庁
参考:消費税のしくみ|国税庁
参考:No.5759 法人税の税率|国税庁
赤字の繰り越し期間が長い
赤字(欠損金)が発生した際、翌年度に降の黒字総裁し、税負担を軽減できます。繰り越しが可能な年数は、個人事業主が最長3年であるのに対し、法人では原則最長10年と期間が長いため、大きな節税になります。
社会的信用力が向上する
個人事業主と比べて、法人は社会的な信用が高いと言われています。副業解禁の流れもあり、フリーランスなどの個人に業務を委託する企業も増えてきましたが、対法人でしか取引を行わないという企業も存在します。また、金融機関から資金調達を受ける際や不動産を契約する際も、資本金や事業目的が明確になっている法人の方が、評価がされやすい傾向にあります。
資金調達しやすくなる
法人であれば、金融機関からの借り入れ以外にも、資金調達の選択肢が増えます。具体的には、公的機関からの補助金をはじめ、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの調達などが挙げられます。
決算期を自由に設定できる
個人事業主の場合、決算はいわゆる「確定申告」になります。開業のタイミングに関わらず「1月1日から12月31日まで」の1年間ごとに申告するため、決算期を自分の都合で決めることはできません。それに対して法人は、会社設立時に定款に定めることで、決算期を自由に決定できます。事業の繁忙期を避けられることは、大きなメリットとなるでしょう。
経費計上の選択肢が増える
法人化することで、個人事業主では計上できなかった項目が新たに経費として認められるようになります。例えば、法人では福利厚生費や出張手当、車両関連費といった項目も経費計上が可能です。
事業継続・拡大しやすくなる
法人は個人事業主と比べて事業継続や拡大がしやすい点もメリットです。
例えば、個人事業主が死亡すると、保有している財産はすべて相続の対象になり、相続税や贈与税が課税されます。また、屋号の利用といった業務上の許認可はすべて取り直しが必要です。一方で法人の場合、許認可などはあくまで法人が取得しているため、代表者名変更などの手続きをとることで、事業をそのまま継承できます。
また、法人化によって社会的信用が向上し、資金調達の幅が広がることで、設備投資や人材採用など、事業拡大に向けた選択肢が増えます。
個人事業主が法人化(法人成り)するデメリット
法人化(法人成り)には、以下のデメリットも存在します。
法人設立に手間とコストがかかる
法人設立時には、定款の作成や法務局へ登記申請など、多くの書類作成や手続きを行わなければならず、個人事業と比較して手間がかかります。また、法人設立をサポートしてくれる専門家に依頼する場合は費用が発生しますし、すべて自分で行う場合でも登録免許税や定款認証費用などが必要です。
社会保険への加入義務がある
個人事業主で社会保険への加入義務があるのは、「常時5人以上の従業員がいる」など一定の条件を満たす場合に限られます。しかし法人の場合、社会保険への加入義務があります。たとえ従業員がおらず役員1名のみといったケースでも加入が必須となるため、その分費用がかさむ点をデメリットに感じることもあるでしょう。
事務作業や手続きが増加する
法人成りを行うと、個人事業主のときに比べて事務作業や各種手続きが大幅に増えます。設立時だけでなく、事業を継続するために、毎年の決算書作成や法人税・消費税の申告が必須となり、会計処理もより厳密に行わなければなりません。また、役員報酬の設定や社会保険への加入手続きなど、労務関連の管理も発生します。
赤字でも税金の支払いが生じる
法人はたとえ事業が赤字であっても、一定の税金を支払う必要があります。代表的なものが「法人住民税の均等割」です。均等割は、法人の所得に関係なく課される税金で、資本金や従業員数、自治体によって金額が決まります。
個人事業主から法人化(法人成り)する最適なタイミングは?

個人事業主が法人化を検討するタイミングは、所得や売上高、事業の将来性などを基準に判断するのが一般的です。以下のポイントにあてはまる場合、法人成りを検討する価値が高いと言えるでしょう。
個人事業の所得が毎年800万円を超えている
個人事業の所得が毎年800万円を超えている場合は、法人化を検討するタイミングです。
所得が695万円超900万円以下の場合、個人事業主に課される所得税率は23%です。累進課税のため、所得の増加に応じて所得税率が最大45%まで上がります。
一方、法人税率は、所得額800万円以下は15%、800万円超の場合は23.20%です。800万円以下でも法人の方が納税額少なくなる場合もありますが、各種控除や法人化の際の報酬額、また法人化で必要な各種費用などの条件によって総合的な負担額は異なります。
ひとつの目安として、税率が逆転する800万円を超える所得があるなら、専門家に相談し正確に計算してもらうと良いでしょう。
売上高が1,000万円を超えている
売上高が1,000万円を超えている場合も目安のひとつです。その理由は、前述のとおり、課税売上高が1,000万円以上になると、消費税の納税対象となるからです。このタイミングで法人化すれば、設立から最長2期分の消費税免除のメリットを受けられる可能性があります。ただし、法人化した際も適格請求書発行事業者の登録する場合はこの対象ではない点に注意しましょう。
事業拡大や資金調達が必要
雇用や業務委託などを活用し事業を拡大したい、そのための投資に資金調達を行いたいなら、法人化を検討するタイミングです。法人化することで社会的信用度を高められる上、採用や永続的な事業継承に取り組みやすくなるでしょう。
法人化(法人成り)の手続きの流れ
個人事業主から法人化する際の手続きについて、最低限必要な流れを確認しましょう。
会社形態・基本事項の決定
法人化をするにあたり、まずは以下の項目を明確にする必要があります。
- 会社の種類(法人形態)
- 商号(社名)
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金額
- 発起人(出資者)の氏名住所
- 発行可能株式総数
- 発起人全員分の印鑑登録証明書と実印
その他、以下のような項目についても決めておくと、その後の事業運営を円滑に行いやすくなるでしょう。
- 役員構成、役員任期
- 会社機関(取締役・監査役)
- 事業年度(決算期)
- 会社設立日
定款の作成・認証
上記の基本事項を、組織運営の規則となる「定款」にまとめましょう。株式会社の場合、作成した定款について公証人による認証を受けます。合同会社の場合は公証人による認証が不要なため、手間と費用を軽減できます。
資本金の払込
定款の作成と認証が完了したら、発起人の口座に資本金を払込(振込)します。資本金が入金されたことを証明するために、通帳やインターネットバンキングの画面を印刷します。
必要書類の準備・法人登記の申請
法人登記には、上記で作成した定款だけでなく、さまざまな提出書類を作成する必要があり、法人の形態によって必要書類が変わります。すべての書類が整ったら、法務局での登記申請を行います。
個人事業の廃業手続き
基本的には「法人の設立日(法務局に申請・受理された日)」を個人事業の廃業日とします。「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業から1ヶ月以内に税務署に届け出ます。
個人資産・債務の引き継ぎ
個人の資産で法人に引き継ぐものがあればそれぞれ手続きを行います。
個人から法人へ名義変更
契約しているサービスや取引先へ、名義変更の手続きやご案内を行います。
法人化の「ビジネス住所」はどうする?オフィス形態の選び方

「これまで個人事業主として限定的な範囲でビジネスを立ち上げたけれど、法人化で事業範囲や規模もさらに拡大していきたい!」
そんなとき悩みの種になるのが、法人化する際のオフィス形態やビジネス住所です。
法人化に伴い、会社の住所はさまざまなところで公開する必要があります。プライバシーの観点や信頼性の面でも、法人化に際してそのまま自宅住所を登記することは避けるのが望ましいでしょう。
これまでとワークスタイルを保ちつつ、初期投資や大きなランニングコストをかけずに利用できるオフィスサービスを2つ紹介します。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスは、実際のオフィススペースではなく、連絡先としてのビジネス住所と郵便物受け取りの機能を利用するオフィスサービスです。
「法人化以降も従業員の雇用や取引先との面談が必要ない」「すべての業務はオンラインで行う」といった場合に、最もコストをかけずにプライバシーを確保し、対外的な信用度を高められるオフィス形態と言えます。
バーチャルオフィスについてさらに詳しく知りたい方は、下記関連記事を参照してください。
レンタルオフィス
レンタルオフィスは、複数人向けに区切られた専有スペースをはじめ、共有の受付やラウンジ、オフィス機器などを活用できるオフィスサービスです。あらかじめオフィス家具やインターネット環境が整っているため、入居後すぐに業務を行えます。
「タイミングに応じて柔軟にオフィススペースを拡大・縮小したい」「できるだけ短い期間で法人化を進めたい」という場合に、初期投抑えさえながら、信頼性の高いエリアに業務拠点を構えられることが魅力です。
レンタルオフィスについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
ここでは、法人化する際にコストを抑えて活用できる「バーチャルオフィス」や「レンタルオフィス」を紹介しました。その他にも、起業・創業時のオフィスの選択肢があります。オフィスの種類について全体像を知りたい方は、以下の関連記事も参照してください。
法人化(法人成り)を支援するサーブコープのオフィス

サーブコープは、東京・横浜・名古屋・大阪・福岡の一等地32拠点に、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを構えています。
すべての拠点で法人登記が可能なため、社会的な信頼性向上に役立つ信頼性の高いビジネス住所をご活用いただけます。また、サーブコープにはバイリンガル秘書やITサポートチームが在籍しており、法人化のスタートを力強く後押しします。
「将来の法人化を見据えて、住所地を一等地に設けたい」
「採用や業務委託でも有利になる場所で柔軟なワークスペースを確保したい」
こうしたニーズを背景に、サーブコープのバーチャルオフィスやレンタルオフィスは、法人設立や業務委託の拠点として多くの企業に活用されています。サービス内容や利用条件の詳細については、公式サービスページをご確認ください。
\サーブコープの日本国内の拠点一覧/
詳細を見る
法人化(法人成り)に関するよくある質問
法人化に関する代表的な質問について、最後にまとめて紹介します。
個人事業主が法人化するメリット・デメリットは?
個人事業主が法人化(法人成り)する主なメリットとして、節税対策ができること、社会的信用力が向上すること、資金調達しやすくなることなどが挙げられます。
一方で、法人設立に手間とコストがかかることや事務作業や手続きが増加すること、赤字でも税金の支払いが生じることがデメリットと言えます。
事業の状態や目的などよって、活かせるメリットや影響を受けやすいデメリットは変わってきます。特に、節税効果など専門的な項目については、税理士など専門家のアドバイスを受けると良いでしょう。
法人化(法人成り)にかかる費用は?
法人化にかかる費用は、設立する会社形態と定款の種類、専門家への依頼の有無などによって大きく変わります。例えば、株式会社の場合は定款用収入印紙代や謄本・認証手数料、登録免許税などが必要で、一般的に20万円以上かかります。合同会社の場合、電子定款を使用し自力で設立する方法なら、登録免許税の6万円のみに抑えられるケースもあります。
法人化にかかる期間は?
法人設立の準備期間は、株式会社が2~3週間、合同会社で1~2週間程度と言われています。多数の書類を作成するため、すべて自分で行う場合は、余裕を持って申請まで1ヶ月程度の期間をとるのが良いでしょう。
(まとめ)法人成りの「その後」までしっかり検討しよう

個人事業主の法人化は、コストや管理面での負担が増加する一方、事業を拡大し、事業を継承するために不可欠なステップでもあります。「法人成りのその後」を長く見据えて、メリット・デメリットを検討しましょう。
サーブコープではこれまで、法人成りを含めさまざまな事業形態のお客様のサポートにあたっています。経験豊富な秘書スタッフが法人成りを見据えたオフィス選びのお手伝いをいたしますので、お気軽にお問い合わせください。



