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法人成りすべき? 個人事業主が法人化した方がいいタイミングやメリットは?

個人事業主として独立すると、やがて多くの方が「法人成り(法人化)」を考えます。しかし実際のところ、法人化すべきかどうかの判断は難しいもの。法人化するとどんなメリットが得られるのか、あるいはどのタイミングで法人化すべきなのか、必要な手続きと共にしっかり確認しておきましょう。これから独立を考えている方にはもちろん、すでに個人事業主として事業を営んでいる方にもヒントになるはずです。

個人事業主とは

法人格を持たず個人が自分で事業を営む場合、その人は「個人事業主」と呼ばれます。ただし、個人事業主と言っても従業員を雇うことも可能で、例えば個人経営の飲食店や商店などは、私たちの身近にある個人事業の代表例と言えるでしょう。自分一人、もしくは家族などの近親者と営まれる小規模事業体が多いですが、従業員数や規模に取り決めはありません。

なお、個人事業主として事業を開始するのに、難しい手続きは不要です。税務署へ開業届を提出すれば活動をスタートできます。ただし青色申告による特別控除を希望する場合は、事業を開始した年の3月15日まで(1月16日以降に事業を開始した場合は、事業開始の日から2月以内)に別途、青色申告承認申請書も提出しなくてはいけません。

法人成りとは?

個人事業主が必要な手続きを行い、法人格を持つ事業体となることを「法人成り」と呼びます。これは株式会社だけでなく、合同会社でも同様です。基本的には個人事業主として営んでいた事業を法人がそのまま継承する形となり、個人事業で蓄えた資産、あるいは負債もそのまま引き継ぎます。

なお、法人成りとゼロから株式会社を設立することは別物です。事業や資産、負債のある状態でスタートするのが法人成り。新規に会社を設立する場合は、資本金以外はゼロからのスタートになります。規模や収益状況、あるいは顧客との関係性などを踏まえ、新しく法人を設立するか、個人事業を継承し法人成りするかを検討します。

個人事業主が法人化する5つのメリット

法人成り(法人化)するとどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここで、具体的に5つの点を取り上げて詳しく解説します。

1)節税対策

・所得税は累進課税

まず法人化のメリットとして挙げられるのが節税対策です。個人事業主はもうけ(所得)に対し、国税として所得税を支払いますが、所得税は「累進課税」により算出されるため、所得金額が多いほど下記のように税率が高くなります(税率の上限は45%)。

<所得税率>

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

▲参考:国税庁 所得税の税率

・法人税は比例税率

一方、法人化した場合、もうけ(所得)に対し、国税として支払うのは法人税です。法人税は、税率が一定の「比例税率」が適用されるため、所得税のように所得が増えるほど税率が上がることがありません。つまり、法人としての所得が増えれば増えるほど、節税効果が期待できます。さらに資本金1億円以下の中小企業なら、800万円/年までの所得金額には軽減税率が適用されます。なお、具体的な所得税率は以下の通りです。

<法人税率>

資本金額 税率
1億円以下 800万円/年以下の利益分
・軽減税率の適用事業者:15%
・適用除外事業者:19%
800万円/年超の利益分:23.20%
1億円超 一律23.20%

▲参考:国税庁 法人税の税率

・所得税の税率が法人税を上回ったら法人化のタイミング?

個人事業主の場合、所得が少なければ税率は低いものの、所得が多くなるにつれて法人の税率を上回ります。目指す収益規模によりますが、多くの事業者にとっては、早い段階で法人化のメリットが大きくなるでしょう。

・消費税も節税できる!?

また、消費税についても節税効果が期待できます。個人事業主は事業開始後、2年間は消費税の納付義務のない免税事業者となります。これは、消費税を算出するための基準期間である前年度・前々年度の課税売上高がないためです。しかし法人成りした場合、個人事業主として何年経過し、また前年度にどれだけ課税売上があっても2年間は消費税が免税となります。つまり個人事業主の期間と合わせ、法人成りすることで4年間にわたり消費税が免税となるのです。

・その他

個人事業主は、妻や子など同一生計親族に働いてもらった場合、青色事業専従者でないと、その親族に給与を払ったとしても、必要経費として認められません。

一方、法人にはこのような制限がないため、実際に業務を手伝ってもらっている同一生計親族への給与支払いを、比較的容易に行うことができます。

ただし、法人だからと言って、親族への給与支払いがまったくの自由というわけではありません。業務に関わっている実態があるのはもちろんのこと、他の従業員とのバランスを考慮し、不相当に高額でないようにするなどの配慮は、当然に必要です。

2)社会的信用

法人と比較すると、個人事業主は社会的信用が低いと言われます。昨今はフリーランスなどの個人に業務を委託する企業も増えてきましたが、まだ対法人でしか取り引きを行わないというケースも少なくありません。特にこれは、規模の大きな企業ほど傾向が顕著です。

また、金融機関から資金調達を受ける際も、資本金や事業目的が明確になっている法人の方が融資を受けやすいでしょう。

3)繰越期間が長い

個人事業主の場合、確定申告を青色申告で行えば赤字金額を3年間繰り越すことが可能です。一方、法人化して青色申告を行うと、この繰越期間が9年間となります。個人事業主より6年間も長く繰り越し、赤字金額を所得と相殺できるのです。

4)有限責任になる

個人事業主の場合、金融機関などからの負債やトラブルによって生じた損害賠償などは、すべての個人で責任を負わなければいけません。これを「無限責任」と言いますが、法人の場合は「有限責任」となり、事業上の責任を負うのは個人ではなく法人。個人としての責任は、自身の出資した金額の範囲内になります。

5)事業継承しやすい

例えば個人事業主が死亡すると、保有している財産はすべて相続の対象になり、相続税や贈与税が課税されます。また、屋号の利用といった業務上において必要な許認可はすべて取り直しが必要になります。しかし法人の場合、相続税や贈与税は課税されず、あくまで許認可などは法人が取得しているため、そのまま継承することが可能。また、法人名についても、代表者変更といった登記手続きを行えば、同様にそのまま事業を継続できます。

個人事業主が法人化するタイミングは?

個人事業主が法人成りする場合、「いつすべきか」の判断に悩むケースは多いものです。結論から言えば、事業内容や各個人の考えなどで最適なタイミングは異なります。ただし以下のような状況なら、法人化を検討してもいいのではないでしょうか。

利益の状況

前述の通り、所得税と法人税では税率が異なります。現在の所得税率が法人税率を上回っているのであれば、節税の観点から法人化を検討して良いタイミングと言えるでしょう。一般的に、所得が800万円程度になれば法人化による節税効果が大きくなるとされています。

社員数の増加

個人事業が従業員を常時雇用する場合、その人数が5人未満なら社会保険への加入は任意です。しかし5人以上になると、事業主は従業員を社会保険に加入させなければいけません。社会保険料の負担は従業員と折半ですが、それでも人数が増えれば負担は大きく感じるでしょう。

あるいは将来的に受け取れる年金受給額を考えて、社会保険への加入を望む事業主本人がいるかもしれません(国民年金と比べると厚生年金の方が受給額は高い)。いずれの場合でも、社会保険加入に伴い発生する費用を負担しつつ、かつ資金面で問題なく事業継続が可能となれば、法人化しても良いタイミングかもしれません。

取引先との関係

事業を拡大していく中で、個人では仕事を受けられない状況が発生するかもしれません。これは社会的信用の低さによる部分が大きいですが、特に大企業や自治体等が相手となった際に起こりやすい場面です。こうした背景から法人化しなければ事業成長を遂げられないと判断したなら、法人化に踏み切るのも一つの方法です。

個人事業主が法人化する際の7つの手続き

個人事業主が法人化する場合には、所定の手続きを行う必要があります。順を追って解説していきますので、あらかじめ頭に入れておきましょう。個人事業主は開業届を提出するだけで済みますが、法人設立にはいくつかのステップがあります。

1. 必要事項の決定

法人を設立するに当たり、まずは以下の点について決定します。

  • 法人形態(株式会社 or 合同会社)
  • 法人名
  • 本店所在地
  • 事業内容、目的
  • 役員構成
  • 資本金
  • 決算時期

2. 書類作成と定款認証

必要事項が決定したら、その内容に則って登記手続きを行います。定款をはじめとした書類作成が求められますが、司法書士や行政書士に委託するケースも少なくありません。なお、必要書類の種類はどのような会社を設立するかによって異なるので注意してください。

定款が用意できたら、公証人役場で公証人による定款認証を受けます(合同会社は不要)。なお、定款認証は電子手続きも可能ですが、複雑な手順が求められるため専門家に頼んだ方が良いでしょう。

3. 登記申請

定款認証を受けてその他の書類も揃ったら、法務局へ登記申請を行います。この登記申請の受付日が会社の設立日です。もし法人設立日にこだわりがあるなら、それに合わせて手続きを進めてください。ただし、専門家に頼まずに自分で登記申請を行う場合、書類に不備があり補正や再提出を求められることが多く、場合によっては、希望する設立日に設立できないことになるので、注意が必要です。

4. 資産の移行

事業で使用する機材をはじめ、資産を個人から法人に移行しなければいけません。なお、移行手続きには以下3つの方法があります。

  • 個人事業主から法人が資産を買い取る「売買契約」
  • 資本金に充てる「現物出資」
  • 個人の所有物として法人に貸す「賃貸借契約」

5. 各種届け出および申請

まず、税務署に法人設立届出書と青色申告承認申請書を提出します。設立届は、法人設立から2カ月以内に行わなければいけません。また、雇用している従業員がいれば、給与支払事務所等の開設届出書や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出も必要です。

また、法人設立届出書は、会社の所在する自治体へも提出しなければいけません。提出期日は地域によって異なりますので、事前に確認しておいてください。その他、以下のような届け出も求められます。

  • 年金事務所:社会保険に関わる届け出
  • 労働基準監督署:労災保険に関する届け出
  • ハローワーク:雇用保険に関する届け出

6. 法人口座の開設

個人事業主の場合、個人で開設した銀行口座で資金のやり取りを行います。そのため、支出を明確化する意味でも事業用口座を持つことが推奨されますが、これまで使用していた銀行口座をそのまま使用するケースも少なくありません。

しかし法人化した場合、資金のやり取りは個人ではなく法人名義で行うことになります。そのため、法人の所有する銀行口座の開設が必要です。

7. 個人事業主の廃業手続き

法人化して個人として事業を行わなくなったら、廃業手続きを行いましょう。具体的には廃業して1カ月以内に、税務署へ「個人事業の開業届出・廃業等届出書」の提出が必要です。また、都道府県の税務署や市区町村の窓口に対しても、「事業廃止(廃止)等申告書」を提出。こちらの提出期限は、自治体によって異なります。なお、状況に応じて以下の書類も提出してください。

  • 青色申告事業者:「所得税の青色申告の取りやめ届出書」
  • 従業員を雇用していた個人事業主:「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」

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監修・木村聡子(きむらあきらこ)

木村税務会計事務所・所長。オンラインサロン「仕事に活かすブログ教室」運営。税理士、ウェブメディアアドバイザー、著者、逆算手帳・認定講師などさまざまな分野で活動中。主な著書に「あなたの1日は27時間になる。」(ダイヤモンド社)、「先輩に聞いてみよう! 税理士の仕事図鑑」(中央経済社)など。

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