サーブコープブログ知識・ノウハウ【第1回 海外拠点立地セミナー開催レポート】グローバルに事業展開したいスタートアップは研究開発拠点を海外に置くべき?

【第1回 海外拠点立地セミナー開催レポート】グローバルに事業展開したいスタートアップは研究開発拠点を海外に置くべき?

ビジネスをグローバルに展開しようとする企業が、どの国や地域に必要な拠点・機能を配置するかは、事業の競争力や効率性に影響を及ぼす重要なファクターです。世界中の企業が、各国の産業振興・誘致施策を上手に活用しつつ、地域統括拠点や研究開発拠点の立地・展開を図っています。そこで世界150拠点以上でレンタルオフィスサービスを展開するサーブコープでは、東京共同会計事務所との共催で全3回の海外拠点立地セミナーを開催します。

 

今回は、2022年6月28日に開催された第1回セミナー「研究開発拠点設置の可能性について」のダイジェストとして、海外と比較した日本の研究開発支援の問題点や、シンガポールに研究開発拠点を置くメリットなどをお伝えします。

テーマ 日時 開催場所
第1回 研究開発拠点設置の可能性について 2022年6月28日(火)

15:00~16:00

サーブコープ二重橋拠点 2階 役員会議室
第2回 地域統括拠点設置の可能性について 2022年7月26日(火)

15:00~16:00

第3回 シンガポールにおける各種企業誘致施策(仮題) 2022年8月30日(火)

15:00~16:00

第1回セミナー「研究開発拠点設置の可能性について」開催趣旨

企業にとって、競争力の源泉となる研究開発活動は極めて重要です。研究開発活動の促進のため、国や自治体は補助金や助成金などの直接投資に加え、税制面での優遇措置も提供しています。しかし、日本の研究開発税制は、スタートアップ企業にとってメリットを享受しにくいものとなっています。

一方、自国の産業活性化のため、研究開発を行う企業の誘致・活性化に力を入れる国も少なくありません。グローバル展開を目指す企業であれば、研究開発の拠点を海外に立地し、各種施策を有効に活用できる可能性があります。

今回は、研究開発拠点の有望な候補地としてシンガポールに着目し、税制面でのメリットが日本で研究開発を行う場合とどの程度異なるかをシミュレーションでお示しし、合わせて研究活動の活性化に役立つ各種施策やサポートについてわかりやすくご紹介します。

【このような方におすすめ】

・研究開発に対する優遇措置を最大限に活用したいとお考えの方

・グローバルな事業推進体制を検討・構築したいとお考えの方

・海外拠点立地を効率的に実現したいとお考えの方

【登壇者(東京共同会計事務所)】

平松 直人 
事業開発企画室 グローバル知財チーム チームリーダー。弁理士。知財価値評価、知財戦略策定、知財ライセンス・知財ファイナンススキーム構築、研究開発活性化支援等に従事。

BRIAN TANG CHUIN YIH 
事業開発企画室 プロフェッショナルサービス/新サービス研究チーム スーパーバイザー。米国税理士(Enrolled Agent)。富裕層個人向けのウェルスマネジメントや税金プランニング、日米の税務コンプライアンス及びアドバイザリー、企業の内部監査業務に従事。

高橋 研 
コンサルティング部 パートナー。税理士・米国公認会計士。国際税務アドバイスに係るインハウス及びアドバイザリー両サイドにわたる広範な経験をもとに、国際税務全般に係るコンサルティング業務に従事。

企業価値に占める無形資産のウェイトが高まる

企業の時価総額における無形資産のウェイトが高まっています。以下のグラフは、米国S&P500の銘柄企業の株式時価総額から正味有形資産価値を差し引いた値を、無形資産の市場価値と仮定し、その推移を示したものです。

1975年頃は企業価値のほとんどが現金や建物、商品などの有形資産から構成されていました。しかし、2020年になると有形資産の価値は企業価値の10%に過ぎません。つまり、企業価値の源泉が有形資産から無形資産にシフトしているのです。

無形資産には、特許権などの知的財産権をはじめ、さまざまなものがあります。企業は無形資産のなかでも、財産的価値のある「知的財産」により競争力を高める必要があり、そのためには研究開発が不可欠です。

研究開発を促進させる各国政府の取り組み

研究開発を活性化させる方策は、大きく「人的なもの」と「金銭的なもの」に分けられます。人的な側面では、教育・研修、人材確保、共同研究、委託・外注の活用などが考えられます。そして、金銭面では、出資・融資、補助金・助成金、税制支援措置の活用などが挙げられます。

この金銭的側面のうち、補助金・助成金や税制支援措置などの、国や自治体による支援状況を概観します。以下のグラフは、企業の研究開発活動に対する補助金などの直接投資(Direct Funding of BERD)と税制面での支援(Tax Support for BERD・Subnational tax Support for BERD)の規模(GDP比)を国ごとに比較したものです。

このグラフのとおり、日本では直接投資よりも税制面での支援の額が全体としては大きいことがわかります。日本で研究開発を進める企業にとっても、税制面での支援措置が活用できないかを検討しておくことは意義のあることと言えるでしょう。

日本に研究開発拠点を置くと税制支援の恩恵がない?

それでは、日本の研究開発税制の概要を見ておきます。日本の研究開発税制(法人税額の控除)の概要は以下のとおりですが、これを理解するうえで重要なキーワードは次の2つです。

  • 控除率:法人税額から控除可能な額の、対象費用に対する割合
  • 控除上限:控除可能な額の、法人税額に対する割合の上限

日本の場合、中小企業では控除上限までの範囲で、試験研究費の12〜17%を法人税額から控除できます。また、特別研究機関と共同で試験研究を行った場合にはその費用(特別試験研究費)の20〜30%を控除することが可能です。

控除上限については、試験研究費は「法人税額の25%」が原則で、試験研究費の規模などにより上乗せ措置があります。特別試験研究費の控除上限は10%で、試験研究費・特別試験研究費の合計で控除上限は最大50%まで認められます。

ただし、ここで問題があります。研究開発を積極的に行っているスタートアップの場合、創業後しばらくは赤字のケースがほとんどです。しかし、赤字であればそもそも法人税の負担がないため、税額控除による恩恵を受けられません。また控除の繰越の仕組みがないため、翌年以降に黒字になって法人税を支払うことになっても、赤字の期間に発生した費用を遡って控除することも認められません。

ここで、海外に目を移すと、所得がマイナスでも一定の税制の恩恵を受けられる国は少なくありません。実はOECD(経済協力開発機構)のレポートによれば、研究開発に対する優遇税制を提供する国のうち、赤字企業が税制の恩恵を得られないのは、日本とブラジルだけなのです。

こういった理由から、「グローバルに事業展開したいスタートアップは、研究開発拠点を日本に置くべきなのか?」という疑問が浮かんできます。

シンガポールに研究開発拠点を置くメリット

次に、シンガポールの研究開発税制の概要も見てみます。シンガポールは日本よりも税制優遇が手厚く、研究開発にかかる費用を100%損金にできるだけでなく、さらに最大で150%の上乗せが認められます。つまり、100の支払いに対して、250の損金が計上できるということです。しかも、この損金は翌期以降に繰越控除できます。

税率が低い点もシンガポールに拠点を置くメリットです。日本の場合、国税と地方税を合わせた法定実効税率は約31%ですが、シンガポールは17%です。

このほか、シンガポールは国による産業誘致・振興施策が手厚く、例えば拠点を設置するときの助成や、特許など知的財産権の権利化費用に対する支援など、さまざまな優遇措置の活用が可能です。金融センターとして世界から人材や資金が集まってきていることや、地政学的な安定度においても、魅力的です。

ケーススタディ 日本VSシンガポール

ここからは、以下の2つのケースを想定して、税負担に与える影響を比較します。

1 スタートアップが日本国内で研究開発・事業化を推進する場合

2 スタートアップがシンガポールに主要拠点を置き、研究開発・事業化を推進する場合

【前提条件】

比較の結果、ケース1(日本で研究開発)の場合は売上が発生した5年目から法人税の支払いが発生します。一方、ケース2(シンガポールに主要拠点)では9年目までシンガポール側の法人税の支払いはありません。また、10年目以降も低税率や250%の損金算入によりシンガポールでの法人税額は抑えられています。

次のグラフは、ケース1とケース2の損益などの推移をシミュレーションしたものです。ここではシンガポールの物価を日本の110%と想定していますが、税負担を考慮すると、シンガポールの方が利益を残しやすいという結果が導き出されました。

シンガポールへの研究開発拠点設置のメリットは大きい

今回のシミュレーションにより、シンガポールの手厚い研究開発税制と低法人税率のメリットを確認できました。

ただし、シンガポールの税制優遇などを受けるには、シンガポールに実体のある拠点を設置する必要があります。物理的なオフィスを持ち、その拠点が主体となって研究開発や事業化を行わなくてはなりません。事業の実体が日本にあると判断されれば、日本の税制に基づき課税されます。

実態のある拠点設置において、サーブコープのレンタルオフィスがおすすめ

サーブコープではシンガポールに4つの拠点を展開しております。海外拠点契約をご検討の際には、日本拠点へお問い合わせいただくことも可能です。契約書は全て英語になりますが、サービス説明や内覧など契約までのサポートを日本語で対応いたします。また、現地で日本語サポートが必要な際はサーブコープの秘書サービスがおすすめです。バイリンガル秘書がオンラインで翻訳、通訳などのサポートをいたします。ご興味ある方はこちらよりお問い合わせください。

 

次回、第2回イベントは2022年7月26日(火)に「地域統括拠点設置の可能性について」をテーマとして開催します。日本の移転価格税制とタックスヘイブン税制の概要をご説明しつつ、事例として海外に設置する地域統括拠点と販売子会社の活用等を通じてグループ実効税率の低減を図るスキームをご紹介します。

「東京共同会計事務所」は、ファイナンス分野を中心とした会計・税務、財務に関する専門性の高いコンサルティング・サービスを提供しております。アドバイザリーから事務管理に至るまで、総合的なサービスを提供しております。クライアント本位のサービスを提供することを行動規範とし、サービス品質の向上にも着実に取り組んでおります。海外の専門誌からも毎年、我が国におけるベスト・アドバイザーのひとつに数えて頂ける迄に至っており、国際的にも高い評価を頂いております。
URL https://www.tkao.com/

 

サーブコープでは定期的にビジネスに役立つセミナーを開催しています。
ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。

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