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フリーランス必見! 収入が少ないときは、国民年金の「免除・猶予」を検討しよう

フリーランスになると、「国民年金保険料」を毎月納付する義務があり、納付を怠ると財産の強制徴収などの問題が生じます。そこで今回は、国民年金保険料を支払うのが難しい場合に利用したい「保険料免除・納付猶予」について解説します。

払えるのに払わない人には「強制徴収」がなされる?

国民年金保険料は、原則、1ヶ月分に相当する金額(平成30年度の場合16,340円)を、翌月末までに納付しなければなりません。納付期日までに納めなかった場合、年金事務所において「未納」として扱われ、納付の督促の通知がなされます。

督促が来ても、なお納付を怠った場合、「強制徴収」が行われる可能性があります。強制徴収とは、個人の財産調査がなされ、所有する財産を差し押さえられるという厳しい措置。仕事に必要な機材なども強制徴収の対象になる恐れがあります。

未納がどれくらい続けば強制徴収されるのか明確な決まりはありませんが、日本年金機構が毎年設けている「国民年金保険料強制徴収集中取組月間」の通知が参考になります。直近の2017年12月の場合、強制徴収の対象者は以下のとおり明示されていました。

【強制徴収対象者】
1 控除後所得額300万円以上で、未納月数13ヶ月以上
2 控除後所得額350万円以上で、未納月数7ヶ月以上

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「控除後所得額」は、毎年提出する確定申告書の控えから確認できます。この条件を見て分かるように、支払う能力があるにもかかわらず納付をしていない人が強制徴収の対象となっているようです。

したがって、所得が低い場合や、未納月数がまだ少ない場合は、強制徴収までは行われないかもしれませんが、それでもやはり未納は避けたほうが良いでしょう。なぜなら、将来の年金受取額が“減ってしまう”からです。

未納のまま放置していると、未納期間に相応する年金はもちろん減額されますし、場合によっては、年金保険料を納付した期間があるにもかかわらず年金をまったく受給できなくなる可能性があります。年金を受給するためには、保険料を納めている「受給資格期間」が最低10年必要なのですが、未納期間はカウントされないからです。

たとえば、国民年金保険料を9年間納付していて、残る期間がすべて未納であれば、受給資格期間の条件を満たしていないため、年金を受給することができません。つまり、9年間納付した保険料が無駄になってしまうのです。

将来受け取れる可能性のある年金は、老後資金である「老齢基礎年金」だけではありません。障害や死亡といった不慮の事態に備えるための「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」も生活の安心を守るうえで重要なものですが、受給資格期間が不足すると、これらすべての年金を受け取れなくなる可能性があります。

こうした事態を避けるには、国民年金保険料を遅れることなく納付しなくてはなりません。国民年金保険料は、会社員のように給与天引きしてもらうことができず失念しがちですから、口座振替にするなどして未納を防止すると良いでしょう。

払いたくても払えないときに使える「免除・猶予」

しかし、収入が十分にないなど、納付したくともできない状況に陥った場合は、未納のまま放置せず、必ず「保険料免除・納付猶予」の手続きを取りましょう。

まずは、「保険料免除」(以下「免除制度」)の仕組みについて説明します。

免除制度を受けるには、年金事務所において審査を受けたうえで、本人・世帯主・配偶者の所得に応じて免除額が決められます。

審査対象者所得基準額
全額免除本人・配偶者・世帯主(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
4分の3免除本人・配偶者・世帯主78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除本人・配偶者・世帯主118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除本人・配偶者・世帯主158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
納付猶予本人・配偶者(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

 

免除のパターンは上記の表のとおり、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4つあり、審査対象者の前年所得が「所得基準額」を超えなければ、各区分の免除制度や納付猶予を受けられます(「納付猶予」については後ほど説明します)。

たとえば、本人と妻、扶養に入っている母親という3人世帯があったとすると、全額免除を受けるには、この3人の前年所得が、それぞれ所得基準額97万円(2×35万円+22万円)を下回る必要があります。なお、所得基準額の算式にある「扶養親族等控除額」と「社会保険料控除額」は、確定申告書の控えで確認することができます。

納付していなくても、将来の年金を受け取ることができる?「未納」の放置は損しかしない!

受給資格期間にカウント年金額への反映
納付(追納を含む)
免除制度
猶予制度×
未納××

 

免除制度を受けることのメリットは2点あります。まずは、「受給資格期間にカウントされる」という点。年金を受け取るには受給資格期間が最低10年必要であることは先述しましたが、免除制度を受けていれば、国民年金保険料を支払っていなくとも、その期間は受給資格期間にカウントされます。

2つ目のメリットは、「年金を受給できる」という点。免除制度を受けることで、実際に国民年金保険料を納付していなくとも、老後(現在の制度では65歳以降)に満額ではないものの、年金を受け取ることができます。

一方、「納付猶予制度」(以下「猶予制度」)は、免除制度と同様に、実際に年金保険料を納付していなくとも、猶予制度を受けている期間も受給資格期間にカウントしてもらうことができますが、将来の受取年金額には反映されません。

したがって、基本的には免除制度のほうが有利ですが、所得制限は免除制度のほうが猶予制度よりも厳しくなっています。免除制度では、本人と配偶者に加え、世帯主の所得も考慮されるのですが、猶予制度の場合は本人と配偶者の所得だけで審査されるからです。そのため、免除制度の条件をクリアできない場合は、猶予制度を検討すると良いでしょう。

免除制度・猶予制度を受けるには、「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」を作成し、住所地にある市区町村役所(場)の国民年金担当窓口か、年金事務所に提出する必要があります。免除制度・猶予制度を受けられる期間は、申請書を提出した日を基準として、以下のとおりに定められています。

過去期間:申請書が受理された月から2年1ヶ月前
将来期間:翌年6月(1月〜6月に申請が受理されたときは、その年の6月)

たとえば、2018年5月に申請が受理された場合、免除制度・猶予制度を受けられる期間は、2016年4月分から2018年6月分まで。2018年7月に申請が受理された場合は、2016年4月分から2019年6月分までとなります。

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払う余裕ができたら早めに「追納」を

上記のとおり、年金の支払いを未納のまま放置する場合と、免除制度や猶予制度を利用する場合とでは、将来に対するリスクコントロールが大きく異なります。ただし、こうした制度を利用すると未納とはならないものの、将来の受取年金額は少なくなってしまいます。そのため、いずれ収入に余裕ができたときに検討したいのが、遡って年金保険料を納める「追納」です。

注意が必要なのは、「追納できるのは過去10年以内に免除制度や猶予免除を受けた期間に限られること」と、「経過期間に応じて加算金がかかること」です。そのため、追納をする場合はできるだけ早期に手続きを取る必要があります。

国民年金を納付する方法はさまざまであり、収入的に納付が難しい場合であっても、救済措置が設けられています。漫然と未納を放置し、強制徴収や年金の減額がなされる前に、早めに対処しておくと賢明です。

 

 

 

 

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