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ふるさと納税で節税メリットを受けるための「確定申告」と「ワンストップ特例制度」とは

日本全国の地方自治体に寄付をすることで、お礼品をもらえる「ふるさと納税」。税金の還付や控除を受けられる嬉しい制度ですが、手続きは自分で行う必要があります。そこで今回は、還付や控除を受けるための方法やポイントを、「確定申告」と「ふるさと納税ワンストップ特例制度」に分けて解説します。

ふるさと納税の確定申告をすべき理由

ふるさと納税は、地方自治体に寄付することで所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ)と住民税ともに節税効果があるお得な制度ですが、節税のメリットをしっかり受けるには、寄付した額を、国や地方自治体に知らせる必要があります。その方法が「確定申告」です。確定申告では、毎年1月1日から12月31日までの自分の所得税を計算しますが、ふるさと納税の寄付額から計算した「寄附金控除額」を自分の所得税から差し引くことができます。住民税はこの所得税をもとに算出されるため、二重に節税を受けられることになるのです。

出典:総務省「ふるさと納税のしくみ」控除額の計算

実は「確定申告」よりも簡単に税金控除を受けられる制度もあります。「ふるさと納税ワンストップ特例制度」です。ただし、すべての人がこの制度を利用できるわけではありません。

ふるさと納税の確定申告が必要な場合と、ふるさと納税ワンストップ特例制度が利用できる条件をそれぞれ確認していきましょう。

ふるさと納税の確定申告が必要なケース

 次の3つの条件に1つでもあてはまる人は、確定申告が必要です。

  1. 給与の収入金額が2,000万円を超える
  2. 給与を1カ所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える
  3. 給与を2カ所以上から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整をされなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)との合計額が20万円を超える

上記の2と3は、会社から給料をもらいながら、副業などで年間20万円を超える所得を得た場合です。その他、確定申告が必要になる場合の細かい条件については、国税庁ホームページから確認してください。

また、上記に該当しない場合であっても、「確定申告をしたほうがいい」という場合もあります。こちらは、医療費控除や、住宅ローン控除(初年度のみ)といった減税措置を申告する場合が該当します。

ふるさと納税の確定申告はどうやるの?

では、上記3つのいずれかにあてはまる人は、次の手順でふるさと納税の確定申告を行いましょう。

確定申告は所定の確定申告書に、源泉徴収票などの書面を添付しますが、ふるさと納税を行った場合は、地方自治体に寄付をした後に送付される「寄付受領証明書」も添付してください。また、寄附金控除の欄に控除額も記入します。

次に、控除額の計算方法について説明していきます。

まず、ふるさと納税で寄付をした合計金額から2,000円を差し引いた額がすべて寄附金控除額になります。例えば2019年内に、ある自治体にふるさと納税で20,000円を寄付したとします。その場合、20,000円から2,000円を引いた18,000円が寄附金控除額となり、この額に所得税の税率をかけたものが、所得税から控除される金額になります。

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【所得税からの控除】
(ふるさと納税額ー2,000円)×所得税率(※1)
(例)年間の所得金額が300万円で合計20,000円を寄付した場合の控除額
(20,000円ー2,000円)×10.210%=1,837円
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(※1)平成49年中の寄附までは、所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率になるので、上記の税率に、復興特別所得税として、(税率×2.1%)を加算します。

ただし、寄附金控除の対象となる寄付金額は、収入や家族構成などに応じて一定の上限があります。この上限を超えて寄付をした場合、超えた部分については節税メリットが受けられず、自己負担額が2,000円に収まらなくなるため、寄付をする前に確認しておきましょう。

寄付額の年間上限額は、総務省のホームページ(※2)を参照するほか、ふるさと納税に関する各ポータルサイトのホームページでシミュレーションできます。

確定申告の期限

 確定申告には期限があります。税額を計算した結果、納税額が生じる場合は、翌年の3月15日(休日の場合は翌日)が確定申告書の提出期限となります。例えば、副業による収入と寄附金控除を一緒に申告した結果、納税額が生じたのであれば、この期限までに手続きを終える必要があります。

一方、計算をした結果、還付金が生じる場合は期限が異なります。例えば、年末調整をしたサラリーマンが減税措置である医療費控除とふるさと納税を一緒に申告するようなケースです。この場合、確定申告の期限は、「申告をする年分の翌年1月1日から5年間」と定められています。つまり、ふるさと納税を行った翌年の1月1日から5年間は確定申告をすることができます。

このように、還付金が生じる場合は期限にゆとりがありますが、確定申告が遅くなるほど、還付金を受け取るタイミングが遅くなります。できるだけ早めに手続きをしておきましょう。

ふるさと納税ワンストップ特例制度とは

次に節税メリットを受けるためにふるさと納税の確定申告をすべき理由と、手続き方法について解説しましたが、なかには、確定申告をしなくていいケースもあります。「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用する場合です。

ふるさと納税ワンストップ特例制度とは確定申告よりも簡単に税金の控除が受けられる制度です。所得税からの控除は受けられませんが、その分も含めた控除額の全額が、翌年度の住民税の減額という形で控除されますので、納税をする人に損はありません。

以下の2つの条件を満たせば、確定申告ではなく、ふるさと納税ワンストップ特例制度で税金控除を受けることができます。

  1. 確定申告が不要な給与所得者である
  2. ふるさと納税で寄付をした自治体が5団体以内である

確定申告が不要な給与所得者とは多くの場合、「会社員」があてはまります。確定申告をする必要のない会社員で、寄付をした自治外が5団体以内の場合であれば、ワンストップ特例制度で税金控除を受けることをおすすめします。

手続きは簡単です。ワンストップ特例制度の申請用紙に氏名などを記載し、本人確認書類の写しと一緒に、寄付をした自治体に送付をするだけでOK。この用紙は、寄付をした自治体から取り寄せることができ、ポータルサイトなどからプリントアウトをすることが可能です。

ふるさと納税による還付・控除を受けるまでの流れ

ここまで紹介したように、ふるさと納税は、確定申告による方法と、ワンストップ特例制度を利用する方法があります。いずれにしても、寄付額を上限額に収めていれば自己負担額は2,000円になるのですが、節税メリットを受けるタイミングが異なります。確定申告を行った場合と、ワンストップ特例制度を利用した場合に分けて、節税メリットを受けるタイミングをそれぞれ見てみましょう。

確定申告の場合

確定申告を行った場合は、「所得税の軽減」と「住民税の軽減」を受けることになります。所得税については、所得などによって「納税額が減る」もしくは「還付を受ける」という形で、税制メリットを受けることになります。後者の場合は、確定申告をしてから1カ月ないし1カ月半程度で還付金を受け取ることができます。

住民税の軽減を受けるのは、確定申告をした後です。例えば2019年分の所得税の確定申告をすると、その情報が地方自治体に引き継がれ住民税が決まり、1年分の税額が2020年6月から翌年5月に分割して天引きされます。つまり、ふるさと納税による、住民税の節税メリットは、翌年6月から12カ月間に分けて受けられるということです。

ワンストップ特例制度の場合

一方、「ワンストップ特例制度」を利用した場合は、前述のとおり、所得税の軽減ではなく、まとめて住民税の軽減として節税メリットを受けます。地方自治体に寄付をした翌年6月から12カ月間に天引きされる住民税が減額されます。

まとめ

 今回の記事でご紹介したとおり、ふるさと納税の手続きは、「確定申告を行う場合」と、「ワンストップ特例制度を利用する場合」に分けることができます。これらの手続きをしないと節税メリットを受けることができず、損をしてしまいます。ふるさと納税のしくみを正しく理解し、確実に手続きを行うようにしましょう。

参照(※2)総務省|ふるさと納税のしくみ

監修・木村聡子(きむらあきらこ)
木村税務会計事務所・所長。オンラインサロン「仕事に活かすブログ教室」運営。税理士、ウェブメディアアドバイザー、著者、逆算手帳・認定講師などさまざまな分野で活動中。主な著書に「あなたの1日は27時間になる。」(ダイヤモンド社)、「先輩に聞いてみよう! 税理士の仕事図鑑」(中央経済社)など。

 

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