サーブコープブログ知識・ノウハウ海洋プラスチックごみ問題とは? 原因と対策を解説 | いまさら聞けない時事問題 Vol.4

海洋プラスチックごみ問題とは? 原因と対策を解説 | いまさら聞けない時事問題 Vol.4

日本では敬遠されがちな時事問題ですが、社会の動向はビジネスにも影響します。忙しいビジネスパーソンのために、いまさら聞けない時事問題を分かりやすく解説するシリーズ。Vol.4は国際的な取り組みが進んでいる、海洋プラスチックごみ問題を取り上げます。

年々深刻さを増す海洋プラスチックごみ問題。国連によると、毎年800万トン以上のプラスチックごみが海洋に流れ込んでいて、その総量はすでに1億5000万トンを超えるといわれています。2050年には、地球上に生息する魚の重量をプラスチックごみの重量が上回るとも予測されており、早急な対策が必要です。

この問題は国際社会でも大きく問題視されていて、2019年6月に大阪市で開催されたG20サミットでは、2050年までに新たな海洋プラスチックごみによる汚染をゼロにする目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を各国首脳が共有しました。

では、海洋プラスチックごみをゼロにするためには、どのような対策が考えられるのでしょうか。まずは問題点と原因から探っていきましょう。

海洋プラスチックごみ、何が問題?

 プラスチックごみによる海洋汚染で特に危惧されているのは海洋生物への影響ですが、人体への影響や経済損失も見過ごせません。何が問題なのか、順に見ていきましょう。

海洋生物への影響

海洋生物への影響は甚大です。例えば、ウミガメがプラスチックのポリ袋をクラゲと間違えて食べてしまったり、廃棄されたプラスチック製の漁業網に絡まってクジラや海鳥が窒息死したりするなど、被害の報告が世界中で後を絶ちません。

人体への影響

また、「マイクロプラスチック問題」も看過できない課題の一つです。マイクロプラスチックとは、海流で漂流したプラスチックごみが雨や波、紫外線によって5ミリ以下の細かい粒子に砕かれたもの。それを海洋生物が“餌”と間違えて食べれば、その後の食物連鎖であらゆる生物の体内にプラスチックが取り込まれることになります。

もちろん魚を口にする人間も例外ではありません。2019年6月、AFP通信が報じたカナダ研究チームによる調査結果では、1人あたりが年間で取り込んでいるマイクロプラスチックは約5万2000個だとか。人体への危険性は解明されていませんが、プラスチックに入っている添加物や有害な化学物質が内臓に悪影響を及ぼすとの見方もあり、今後の研究次第ではさらに大きな問題に発展していくかもしれません。

経済損失

2018年にOECD(経済協力開発機構)が発表した報告によると、海に流れ出たプラスチックごみがアジア・太平洋地域の観光業に与える損害は年間6億2200万ドル(約672億円)にのぼるとされ、ごみの回収や漁業への悪影響、船舶の事故などを含めると、その損失は膨大になるとしています。

海洋プラスチックごみの流出量、多い国と原因は?

 プラスチックごみを多く流出している国は主にアジア諸国で、全体の約8割を占めています。なぜアジア諸国に集中しているのか、また、日本がプラスチック生産量世界3位という点についても考えてみましょう。

プラスチックの年間生産量は20倍に

その利便性から、私たちの身の回りにあふれかえっているプラスチック。これほど大量に生産され始めたのは実はここ半世紀のこと。50年前の年間生産量は今の20分の1しかありませんでした。現在、プラスチック総生産量のうち、レジ袋やペットボトルなどのパッケージ類が全体の3分の1と最多。ごみとして廃棄される約半分もこうしたパッケージ類だといいます。

アジア諸国では分別の習慣や再処理技術が遅れている

世界経済フォーラム(2010年推計値)によれば、世界中にある海洋プラスチックごみのうち、82%の流出源はアジア諸国で、上位には中国やインドネシア、フィリピン、ベトナムなどの新興国が並びます。ごみを分別する習慣がなかったり、リサイクル技術やリサイクル施設の導入が遅れていたりすることが、こうした国々がごみを多く流出する要因になってきました。しかし近年では、インドネシアで植物由来のプラスチック袋の開発が進むなど、変化も見られ始めています。

プラスチックの生産量、日本は世界3位

プラスチックごみの海洋流出量を国別に見ると日本は30位ですが、プラスチックの生産量を見ると、アメリカ、中国に続いて日本は世界3位。そしてアジア諸国にプラスチック製品を大量輸出している国こそが日本なのです。また、2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書によると、1人あたりのプラスチックごみ廃棄量は32キログラムでアメリカに次いで日本は世界2位。プラスチックごみを廃棄している総合量でいえば中国、EU、アメリカ、インドに続いて世界5位。日本が海洋プラスチックごみ問題にどう取り組むかは、地球環境の未来に大きく左右するのです。

問題を改善する3つの対策とは

 海洋プラスチックごみに対する問題意識はここ数年、国際社会においてずいぶん高まりを見せています。実際に、多くのグローバル企業が競うようにして独自の対策に乗り出し、それが追い風となり、自治体や個人の取り組みも目立つようになりました。

企業の取り組み

世界的コーヒーチェーン・スターバックスは、2020年までに世界中の店舗でプラスチックストローの廃止を掲げ、代替ストローの開発を続けています。世界に約2万8000店舗を構えており、年間で使用されるプラスチックストローは推計で10億本。プラスチックストローは小さいが故にごみ処理システムをすり抜け、自然環境に流出してしまうことも多いため、プラスチックストロー廃止の意義は決して小さくありません。

スウェーデンの家具販売大手・イケアは、2020年までに使い捨て用のプラスチック製品の販売をすべて廃止すると発表。プラスチックの皿やスプーン、フォーク、ストローなどがこれにあたりますが、来年以降は再生可能な原材料に切り替えるなどして、環境保護に取り組む方針です。また、世界最大のおもちゃメーカー・レゴも、サステイナブル(持続可能)な原材料を2030年までに発見し、すべてのレゴブロックで使用すると目標を定めています。

日本国内でいち早くプラスチックごみ問題の取り組みに乗り出したのは、ファミリーレストランチェーンのすかいらーく。2020年の東京五輪までに石油由来の使い捨てプラスチック製ストローの使用を廃止すると発表しました。

カップヌードルなどを販売する日清食品ホールディングスが、海洋汚染対策として、紙や発泡スチロールで製造しているカップ麺の容器などを、自然に分解される「生分解性プラスチック」に変更することを決定。2020年から2021年を目安に順次切り替えていく方針です。また、サーブコープジャパンも2019年4月1日から、使い捨てプラスチック製品を全拠点のキッチンから撤去しています。

自治体の取り組み

独自の対策に乗り出す自治体も増えています。

徳島県の上勝町では、プラスチックごみを削減するため、飲食店や商店での個売り、量り売りを推進。油や醤油、米、お茶だけでなく、刺し身やカレーまで数量を指定して買うことができます。また、容器を持参して買い物をするとポイントがたまり、ポイントを使って生活用品などとの交換もできる仕組みを導入するなど、ユニークな工夫がなされています。

また、神奈川県横浜市はイオンとタッグを組み、買い物客にマイバッグの活用を呼び掛けるなど、プラスチックごみ対策に向けたキャンペーンを展開。2019年11月には自治体初となる木製ストローを製作し、市内の飲食店などに導入するなどの施策を試みています。

京都府の亀岡市は事業者に対し、レジ袋の有償無償を問わず、提供を禁じる条例の施行を目指しています。実現すれば全国初の条例で、違反店舗には、店舗名を公表するなどの「罰則」も設ける予定です。

個人の取り組み

国や自治体、企業がプラスチックごみの削減に取り組む中で、私たち一人ひとりにできることは何でしょうか? 問題解決には、以下の「3R」が基本だといわれています。

・リデュース(Reduce)=排出するごみの総量を減らすこと。

・リユース(Reuse)=ごみにせず、再利用すること。

・リサイクル(Recycle)=徹底的に再生産に回すこと。

 

このうち、私たちがすぐに取り組めるのは「リデュース」でしょう。日本国内で年間に消費されるレジ袋の枚数は推定400億枚といわれていて、これを1人あたりに換算すると、1日約1枚のペースで使われていることになります。コンビニやスーパーで何気なくもらうレジ袋を買い物バッグなどで代用することで、無駄な消費を減らすことは難しくありません。

 

また、日本国内におけるペットボトルの年間出荷数は約230億本にものぼりますが、その1割ほどがリサイクルされずにごみとして燃やされたり、自然界に廃棄されたりしています。たった1割でも約23億本といえば膨大な量です。ごみをしっかりと分別するのはもちろん、ペットボトルの使用を控え水筒を持ち歩く、海岸や河川敷の清掃活動へ参加するといった積極的な行動も求められているのかもしれません。

 

※参考
環境省|海洋プラスチックごみ問題について
環境省|海洋プラスチックごみに関する状況
国連環境計画(UNEP)|「シングルユースプラスチック」の報告書


文・猿川 佑
ジャーナリスト、雑誌編集者。政治・社会問題からライフスタイルやファッションまで、扱う分野は多岐にわたる。

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