サーブコープブログ働き方【起業家たちのマイルール】「お客さまの生活にあわせた、数cmの違いを導きだす」。バリ島から生まれた廃材家具屋

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【起業家たちのマイルール】「お客さまの生活にあわせた、数cmの違いを導きだす」。バリ島から生まれた廃材家具屋

起業家たちを訪問取材するインタビュー企画。収入の変化、将来への不安、家族の理解…独立を決断する際、尽きない悩みをどう乗り越えたのか。それぞれの起業ヒストリーとビジネスを成功させるうえで大切にしている“マイルール”をうかがいます。

Vol.3 廃材を使った手作り家具「gleam」代表
高谷弘志氏
大学卒業後、ICSカレッジオブアーツで建築と家具を学ぶ。その後、設計事務所や
自転車便、家具屋勤務を経て2006年バリ島に移住。現地で家具デザインをスタートさせ、2008年「gleam」を開業。

バリ島に転がっていた廃材が、夢と現実をつなげた

——起業をしようと思った経緯を教えてください。

昔から、家具や建築に興味がありました。22歳の時、デザインを学ぶために、建築と家具の専門学校に入学。その後、アジアン家具屋で7年間働き、退職後は大好きなインドネシアのバリ島に移住しました。現地で暮らしながら、線路の枕木や古民家を取り壊した廃材が、あちらこちらに転がっているのを目にしたんです。

その時、直感が働きました。「これで家具を作ってみたら面白いんじゃないか!」「これはかっこいいものが作れそうだ!」と。興奮しましたね。専門学校で学んだ家具のデザイン、アジアン家具屋で身につけた輸出入のノウハウ、面白い素材も見つけたうえ、家具屋をやりたいと思っていた僕にとっては、夢と現実がつながった瞬間でした。

——海外で家具を作ることに、ハードルはなかったのですか。

今でこそ、廃材を使った家具を作るメーカーは増えましたが、当時は「なんでこんなのを作るんだ?汚れがかっこいいのか?」と、まず現地の人に理解してもらえないことが多かったですね。サンプルを仕上げるのに1年もかかりました。

職人が急にいなくなってしまう、「雨で図面が見えなくなったから作れない」と言い訳をする、何か一つ注意すればへそを曲げて来なくなるなど、失敗の連続。言葉や文化が違う人たちとのコミュニケーション力は本当にきたえられました。試行錯誤を繰り返しサンプル品が完成。この先は順調に売れるはずだと自分では思っていました。

「成功するだろう」という思いこみ。在庫があふれかえる現実

カヌーの廃材で作られたgleamの「ダイニングテーブル」

——直感で起業したわけですが、迷いや不安はなかったのですか?

それが迷いや不安は全くなく、むしろ、根拠のない自信があったんです。インドネシアの廃材で作った家具とデザインは必ず認められるだろうと。でも、現実は違いました。起業してから3年間、鳴かず飛ばずで全く売れなかった(笑)。会社のお金も、自分のお金も、仕事のパートナーのお金も底をついたのに、商品の家具だけはいつまでも残っている……。

「どうする!?どうすればいいの!?」というパニックの状況に陥り、「今のやり方ではダメだ」ということを思い知らされました。僕は家具をデザインして作ることはできたのですが、その先の営業や販売、広告の経験値がゼロだったんです。今考えたら、売れるわけがないですよね(笑)。

家具の存在を知ってもらわなければ、作っていないのと同じ

——全く売れない低迷期から、どう抜け出したのですか。

パートナーと仕事のやり方についてとことん話し合い、とにかく「人に会いに行こう!」と決めました。もともと僕も彼も営業が得意ではないうえに、誰かと会うよりも、何かを黙々と作っていたいタイプ。でも、どれだけ良いものを作っても、その存在が知られていなければ作っていないのと同じ。だから、機会があればどこへでも顔を出す、友だちの誘いには必ず行く。知り合いを紹介してもらったり、展示会に出席したり、「こんな家具を作っているんですよ」って自分たちから積極的に話すように努力しました。

少しずつ状況が変わり始めたのはその頃からです。東京・国分寺の小さなカフェの展示会からスタートして、少しずつ大きな展示会にも出すようにしたところ、国際的な現代美術を数多く扱う「ワタリウム美術館」で展示をしないかと声をかけてもらいました。それまではインターネット販売が中心でしたが、実際にgleamの家具を見て触ってもらうことで、「gleamの家具が欲しい」「オフィスの家具を作って欲しい」と言ってもらえるように変化したんです。

gleamが手掛けたショップインテリア、BareBuger(ベアバーガー)東急プラザ銀座店

——gleamの家具を使った人からは、どんな感想がありますか。

無垢の木の家具って、ありそうで実は意外と少ないんです。gleamのテーブルを使うことで「コップやお皿を置く時の音がいい」「部屋の空気感が変わった」という感想はよくいただきます。「生活の音が変わる」っていうのはちょっとしたことですが、小さなことが心地よくなると、生活の質は不思議とグッと向上するものなんです。

オフィス家具というと無機質な素材が使われることが一般的ですが、gleam特有の廃材の質感はインパクトがあり、「クライアントとの話のネタにもなる」と言ってもらうこともありますね。

「まずはお話を聞かせてください」。徹底したヒアリングがマイルール

——gleamを続けてきて10年、高谷さんが大事にしてきたマイルールを教えてください。

商品を売るだけではなく、その後の「信頼関係」を意識しています。扱っているものが木なので、季節の湿度差によっては木材の形状変化を起こし、隙間が開いてしまうことがある。これは新しい木材でも、廃材でも起こる現象です。購入時にお伝えしているのですが、時間がたつにつれて大きく形状変化してしまい、クレームにつながることがあります。

そういう連絡を受けたら直接、ご自宅にうかがって直したり、一旦引き取ってメンテナンスをしたりします。会社としては手間もコストもかかるので一時的にはマイナスに見えるかもしれませんが、お客さまと会い、使用状況や環境を聞きながら調整やアドバイスをする。それをきっかけに、信頼関係を築くことができます。

最初はクレームとして連絡をいただいたのに、「ちゃんと対応してくれたからまたgleamさんで購入したい」と、再びご注文をいただくこともあります。そういう時はお客さまとの信頼関係を築けている実感があり、すごく嬉しいですね。

たった数cmの差で、生活の質は大きく変わる

デザインのこだわりもマイルールです。家の間取り、家族構成、食事スタイル、部屋での過ごし方など、ライフスタイルは千差万別。誰一人として同じ人間はいないので、徹底したリスニングを心がけています。例えば、ソファテーブルでも、ソファに座る人と、ソファ前の床に座る人がいますよね。それだけでも快適なテーブルの高さは違ってきます。

「170cm×80cmのテーブルが欲しい」と言われても「まずはお話を聞かせてください」と、お聞きすることにしています。家の図面や間取りを一緒に見ながら「5cm削った方が動きやすくなる」とか「家族が増えるなら10cm幅を広くした方がいい」など、その家庭のライフスタイルを知れば知るほど、ぴったりのサイズとデザインを導きだすことができるんです。

体感しないと分かりづらいのですが、たった数cmの差で生活の質は全く違ってきます。服と同じように、ちょっとした違いが心地よかったりストレスになったりする。一般的な規格の先にあるサイズやデザインをgleamは大切にしています。

自分をさらけ出し、アナログな出会いを大切に

gleam麻布十番店(東京)

——起業したいと思っている方へアドバイスはありますか?

情報があればなんでも買える時代ですが、開業して10年がたった今も、アナログな人とのつながりが大事だと実感しています。そして、人とつながるためには、自分をさらけ出す。商品はもちろんですが、まずはその商品を扱う自分自身を気に入ってもらえるよう努めていたら、自然とつながりが増え、知り合ってから5年後に「実はずっと欲しかったんですよ、高谷さんにデザインしてもらいたくて」と注文をくれた方もいました。いつでも人との出会いを大切にすることができれば、起業されてもうまくいくと思います。

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1978年にオーストラリアで誕生したサーブコープは、起業や事業拡大、新プロジェクトの立ち上げをお手伝いします。世界54都市、日本国内には25カ所の一等地にレンタルオフィスを構え、ITインフラ、秘書サービス、コワーキングスペースが利用可能。契約は最短一ヵ月から。サーブコープのサービスを実際に利用している起業家や、企業のサテライトオフィスとして活用している利用者のインタビューはこちらからお読みいただけます。

 

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