公式HP サーブコープブログ働き方【起業家たちのマイルール】社会を巻き込んで命を救う。馬の学校の新ビジネスモデル

働き方

【起業家たちのマイルール】社会を巻き込んで命を救う。馬の学校の新ビジネスモデル

起業家たちを訪問取材するインタビュー企画。収入の変化、将来への不安、家族の理解…独立を決断する際、尽きない悩みをどう乗り越えたのか。それぞれの起業ヒストリーとビジネスを成功させるうえで大切にしている“マイルール”をうかがいます。

Vol.7 株式会社 馬事学院 代表取締役 野口佳槻氏
小学低学年から乗馬を始め、大学時代は全日本学生馬術選手権大会優勝、全日本学生馬術大会で優勝。大学卒業後、23歳で乗馬クラブの赤字経営を立て直し、3年目で黒字化。32歳、2度目の起業で株式会社馬事学院を創設、馬の専門学校としては業界シェア4割を誇る。現在は競走引退馬の殺処分問題にも取り組んでいる。

ビジネス知識ゼロ。23歳で事業の立て直しに志願

―― 株式会社馬事学院について教えてください。

馬事学院は高校部門の「東関東馬事高等学院」と、専門部門である「東関東馬事専門学院」の2つを馬の学校として運営しています。全寮制の高校部門では高校の卒業資格を取得でき、騎手を目指すコース、競走馬を育成するコース、乗馬と馬術の選手を目指す3つのコースがあります。

専門部門ではJRA(日本中央競馬会)の厩務員(きゅうむいん)になるための専門的な学習を行うほか、深刻な人材不足で悩む、全国の牧場や乗馬クラブなどに即戦力となる人材を教育し、送り出しています。中でも、JRAの厩務員は雇用の安定と夢を担保された馬業界の中でも一番人気のある職業です。馬事学院は、在学中にJRA競馬学校の厩務員課程受験を目指すことができる国内唯一の学校です。

 

―― いつから馬の世界と関わるようになったのですか?

私自身は、小学3年生から乗馬を始めています。日本大学の馬術部に所属し、全日本学生馬術選手権大会優勝、全日本学生馬術大会で優勝しました。4年生でキャプテンを務めましたが、団体優勝に導けなかった悔いが残り、卒業後も馬の世界でNo.1を目指したいと、馬業界のビジネスに挑みました。

 

―― ビジネスの知識はすでにあったのですか?

ビジネスの知識は全然なかったです(笑)。廃業となる乗馬クラブとたまたま縁があり、3年間という期間限定で、事業の立て直しに志願しました。管理責任者に就任し、初年度は赤字、2年目はトントン、3年目は黒字を出して成功し、収益はオーナーと折半。事業からは約束通り撤退しました。

乗馬クラブの会員はほぼゼロから、3年間で200人に増加。さて、次は人を雇用しようとなった時、当時出回りはじめていたインターネットの掲示板(BBS)で募集をかけました。すると、馬の仕事がしたいというニーズ、馬の仕事をしてほしいというニーズがとても多いことに衝撃を受けたんです。あぁ、その需要と供給を結びつける職業訓練的なポジションが必要なんだなと。

銀行の融資はNG。個人投資家に提案した「400万」

―― 新しい事業を思いついた瞬間ですね。

そうです。27歳で会社を立ち上げ、本格的な馬の学校を千葉県八日市場市でスタートしました。馬を知り、馬の管理ができる人材を育成する学校です。JRAの元ジョッキーを講師として迎え、生徒も多く入学し、運営は順調なスタートを切りましたが、会社は自分のコントロールが効かないくらい膨れ上がってしまったんです。立ち上げから5年、もう一度出直すために学校を売却しました。

それで2011年の1月、ちょうど10年前になりますが、今までの失敗や経験に基づいて基礎からもう一度チャレンジしようと立ち上げたのが、現在の株式会社「馬事学院」です。

 

―― 会社の設立資金は調達できたのですか?

乗馬クラブを3年、人材育成の学校を5年経営しましたが、馬事学院としての実績はゼロ。銀行は基本的に新規事業にお金を貸しません。私には担保もありませんでした。それに、馬はギャンブルのイメージが強いため、保証協会の保証が非常に受けにくい背景があります。「対象外業種」に分類されてしまうようです。

私は300万円の資金があれば軌道に乗ると確信していたので、株式投資をする個人に直談判しました。「野口に300万円を投資してください。400万円にして半年後に返します!」と。

300万の資本金8割を広告費に投入

―― 借りた300万円の使いみちは?

まず、生徒獲得に奔走しました。最初は、生徒がゼロなので写真もない、パンフレットも作れない。そこで私がしたことは、競馬雑誌や若者が見ているだろうインターネットのページに、ないものをあるかのように伝えるのではなく、私の考えや会社としての理念を掲載しました。それに240万を投入、残りの60万は借りていた乗馬クラブの家賃3カ月分にあてました。

240万円の投資で初年度に生徒を4人獲得することができました。4人いれば軌道に乗るという自信がありましたね。

 

―― たった4人で収益は出たのですか?

学生が4人もいれば、写真が撮れるし、パンフレットも作れる。新しい生徒を獲得するための販促資料が制作できます。馬事学院は1年に2度、新入生を迎え入れます。初年度の4月に一期生4人が入学、同年10月の2期生は20人が入ってくれました。学費を先に納入してもらうという性質も手伝って、半年後には投資してくれた方に400万円を返済することができました。

もちろん自転車操業で資金はギリギリでしたが、広告→集客→成約のサイクルを続け、数年後には経営も安定していました。

右肩上がりの競馬界。9割の引退馬が殺処分

―― 引退馬を引き取る取り組みもされていますよね。

今、競馬も乗馬も右肩上がりです。コロナ禍でも競馬は売り上げが落ち込まず、ソーシャルディスタンスが保てる乗馬も繁盛しています。産業として全体的に盛り上がっているのは嬉しいことですが、その反面、国内でのサラブレッドの過剰生産での売れ残り、また急激に伸びた産業を支える若手人材の不足が深刻になっているのが現状です。

また、競馬場の数が増えているわけではないうえ、レースの数も同じです。つまり、レースに出られる馬の数には限りがあります。結果が出せない馬はすぐに引退が迫られます。年間で誕生する7000頭のうち約8割が競走馬としてデビューしますが、うち8割近くが3歳で引退。そして引退馬のほとんどは食肉として肥育に出され、殺処分の道を辿ります。

馬事学院ではセリで買い手がない馬や、引退する競走馬を積極的に受け入れています。年間60頭ほどの馬を受け入れて、乗用馬として活躍できるよう再調教し、全国の乗馬クラブに送り出しています。

 

―― そこまでするのは、馬への愛情ですか?

いえ、どちらかというとビジネスモデルとして考えています。セリで残った馬や引退馬を引き取って学生の教材として活用する。馬のお世話ができる人材を育てる。少子化の影響もあってどこも人材不足です。馬事学院で育った学生を、人材として社会に送り出すことができる。これは動物愛護というより、win-winの関係で循環するビジネスモデル。ビジネスとして成功させれば、救われる馬が一頭でも多くなると思っています。

実際、私たちは結果を残しています。学費は他校より1.5~2倍も高額ですが、馬の学校としてはシェアの4割を馬事学院が独占しています。

マイルールは「第三者を巻き込んで、社会に貢献する」

―― ビジネスで大切にしている“マイルール”を教えてください。

商品やサービスを提供する私たちとそのサービスを受け取る学生たち、両者がハッピーになるだけじゃなく、第三者の幸せまで考えたビジネスをする。それがマイルールです。

例えば「お金を払ってくれてありがとう」や「勉強させてもらってありがとう」で終わるのではなく、学生が就職する先で感謝してもらえる、保護者からも喜んでもらえる。学生は馬が存在することで学ぶことができるし、馬は学生が存在することで行き先が決まる。この循環を生むことが市場を作り、社会への貢献を生む。社会をどう巻き込むかを考えないと、企業は長くは生き残れないと思います。

バーチャルオフィスを利用する理由

―― 一般的な賃貸オフィスではなく、バーチャルオフィスを利用されているのはなぜですか。

設立当初は、千葉県の自宅住所で法人登記していたんです。ですが、会社の成長とともにさまざまな人との交流を考え、本社を東京に移すことを考えました。当社が所属する各馬主会への登録にも、東京の方が都合が良かったんです。ただ、今でも私が多くの時間を過ごすのは学生や馬がいる馬事学院です。そのため賃貸オフィスではなく、バーチャルオフィスの利用が最適でした。

 

―― なかでもサーブコープを選んだのはなぜですか。

正直、最初はどこでも良かったというのが本音です。ただサーブコープを内覧した際、スタッフのサービスが丁寧で感心しました。ここ有明フロンティアビル拠点の景観が素晴らしく、千葉からのアクセスがいいのもポイントです。バーチャルオフィスとはいえ、週に1度はオフィスを利用します。商談などで来る方は、オフィスのクオリティの高さに感動されますよ。そして、突然の来客があっても、丁寧に対応してもらえるので安心できます。

電話代行もお願いしていますが、サーブコープの秘書はいわゆる電話オペレーターとは違います。馬事学院の基本的な知識を備え、会社の一員という立場で営業や顧客からの電話に対応してくれます。まさにそこに対応できるかがビジネスのカギとなる業種柄、とても助かっていますね。

バーチャルオフィスと聞くと実際には存在しない形だけのオフィスという後ろめたさがありましたが、今は堂々と胸を張れますね。それだけクオリティの高いサービスがここにはあると思います。

サーブコープは起業のお手伝いをします

今ではシェアオフィスが増え、起業に活用する人が増えています。1978年にオーストラリアで誕生したサーブコープも、皆さまの起業をお手伝いします。日本国内には26カ所の一等地にレンタルオフィスを構え、ITインフラ、秘書サービス、コワーキングスペースが利用可能。契約は最短一カ月からなので、コストも抑え、低リスクです。詳しくはサービスページをご覧ください。

あわせて読みたい