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個人事業主の確定申告が不要・必要なケースとは?節税のポイントも解説!

会社員であれば所属する企業に任せられる所得税の計算ですが、個人事業主やフリーランスは納めるべき税金の額を計算し、自分で確定申告する必要があります。しかし、中には確定申告の手続きが不要なケースがあるのをご存じでしょうか。今回は個人事業主なら知っておきたい確定申告の基本と、申告が必要なケース・不要なケースについて解説します。

確定申告が必要かどうかは「課税所得」による

確定申告が必要か不要かを見極めるには、まず自分の「課税所得」がいくらになるかを知る必要があります。「課税所得」とは税金がかかる所得のことで、年間の収入から経費や控除額を引いたものを指します。

端的にいうと、上記の計算式で課税所得がゼロ、もしくはゼロ以下になれば確定申告は不要。これが基本になります。

ここでポイントになるのは「基礎控除」です。基礎控除とは国が定めている税制の一つで、すべての納税義務者に対し、最低限度の生活を維持するのに必要な部分については「担税力」を持たないと考え、すべての人の所得から一律38万円を差し引く制度を適用しています。

※2020年には税制が改正され、基礎控除額が38万円から48万円に引き上げられます。2020年1月~2020年12月分の確定申告については、上記の計算式が変わるのでご注意ください。

では具体的な例をあげながら確定申告の必要・不要について解説していきましょう。

 確定申告が不要なケースとは

 課税所得がゼロの場合

年間195万円の収入があるフリーランス塾講師

年間195万円の収入がある塾講師がいたとします。授業のために借りた部屋の賃料や通信費、問題集や資料代などで年間160万円の経費があった場合、上の計算式にあてはめると所得は「35万円になります。

次に、ここから基礎控除額38万円を引きます。そうすると差引額は「-3万円」。つまり、課税対象になる所得がないため、確定申告は不要となります。

所得がそもそも赤字の場合

 立ち上げ1年目の飲食店オーナー

立ち上げ間もない飲食店の個人事業主が年間350万円の収入を得たとします。初期投資で経費が1000万円かかっている場合は、そもそもの所得が赤字なので、原則確定申告は不要になります。

課税所得がゼロ、もしくは所得が赤字でも確定申告をした方がいい場合

個人事業主が確定申告をする方法は「青色申告」「白色申告」の2つがありますが、所得が赤字だった場合、青色申告には赤字を3年間繰り越してその間の黒字と相殺することができる「純損失の繰越控除(※1)」があります。これは確定申告することによって適用されますので、赤字の確定申告をした方が、結果的にはメリットが大きいです。

また、事業が赤字になり、本来は確定申告が不要でも、申告することで還付が受けられたり、住民税が考慮されたりするケースがあります。

確定申告が必要なケースとは

課税所得がゼロを上回る場合

年間200万円の収入があるメイクアップアーティスト
次に年間200万円の収入があるメイクアップアーティストの例を見ていきましょう。メイク道具の購入費や交通費に80万円の経費がかかったとします。上の計算式にあてはめると所得は「120万円」。基礎控除額38万円を引いた82万円が課税所得となり、このメイクアップアーティストの場合は確定申告が必要なケースになります。

ただし、基礎控除の他にも医療費控除や生命保険控除など、所得から差し引く金額があり、それによって課税所得がゼロになる場合は確定申告が不要になります。

 節税につながる必要経費の考え方とは

 それでは「必要経費」として認められるものには、いったいどんなものがあるのでしょうか?個人事業主の方の中には、自宅を主な仕事場にしていたり、個人の携帯電話や自家用車を仕事に利用していたりする場合も多いでしょう。

 このように自宅の一部を仕事場として使っている、スマートフォンを仕事でもプライベートでも使用している場合、事業に使っている部分だけを経費とすることができます。これを「按分(あんぶん)」といいます。

必要経費の中でも比較的、大きな額を占めると思われる項目をピックアップしました。

家賃

賃貸マンションおよびアパートを自宅兼仕事場にしている場合は家賃を経費にできます。その際、床面積に対する業務スペースが経費として按分できます。

按分する際は事業で使用している部分だけを経費とすることがポイントです。

賃貸の場合は家賃を按分できますが、持ち家の場合は、住宅ローンの元本は必要経費にならず、“金利”と減価償却費が経費対象です。

例)家賃10万円、床面積100㎡、業務スペース50㎡の場合
10万円×50/100㎡のため、5万円を経費として計上できます。

自動車

車体はもちろん、保険や税金、支払手数料といった、車を購入する上でかかる諸費用も経費として計上できます。ただし、車体の場合は減価償却費になるため、購入額のすべてを1年単位で経費にすることはできないので注意してください。また、法定耐用年数の大半が6年で、新車と中古車の違いもあることから、それらを基準に分割年数が決まります。

例)車体購入額100万円、経過年数5年(5年前に製造された中古車)、法定耐用年数の20%(割合は全て固定)だと、
(6年-5年)+5年×0.2の計算になるため、減価償却期間は2年、経費は1年あたり50万円です。

光熱費は電気代のみ

水道代やガス代は通常は事業に使わないので経費に含まれず、電気代のみが経費になります。また、その場合も家賃同様、事業で使用した分を計上しますが、コンセントの数で比率を計算するのが最も合理的でしょう。

例)電気代25万円(年間)、コンセントの総数20個、業務スペースにある数5個だと、25万円×5/20個のため、6万2,500円が経費ということになります。

通信費

携帯電話および固定電話、インターネットなどにかかる料金は、使用した割合を経費として計上します。インターネットを業務で使う個人事業主の場合、1週間で使う日数が目安となります。一方、携帯電話や固定電話の場合は、1日のうちで業務として使用する割合を判断する必要があります。

例1)インターネット代8万円(年間)、1週間の使用日数5日だと、8万円×5/7日のため、約5万7,000円が経費
例2)携帯電話代12万円(年間)、1日に使用する割合が6割だと、12万円×0.6%のため、7万2,000円が経費

算入できる必要経費についてさらに詳しく知りたい人は、国税庁(※2)のホームページを参照してください。

節税のために必要な領収書や書類はきちんと保管を

節税のためには、経費で使った領収書やレシートを日頃からきちんと管理・保管しておくことが大切ですが、経費として計上するために必ず領収書が必要なわけではありません。

確定申告での領収書の意義は、「いつ、誰に、何のために、いくら支払ったか」を明らかにすることです。つまり、日付、支払い先、支払った金額や明細が記載されていれば、領収書ではなく、レシートでも有効になります。領収書やレシートが受け取れない事業にかかわるお祝い金などは出金伝票で対応します。これらにはいつ、誰に、何のために、いくら支払ったかということが明記されているため、支払いの証拠となるのです。

また、計上した経費の証拠として領収書、レシート、出金伝票はきちんと保管しておく必要がありますが、確定申告する際に提出する必要はありません。

これらは個人事業主が提出した確定申告書類について税務調査などが入る場合に備えておくものです。領収書やレシートについては、個人事業主の場合青色申告は7年、白色申告では5年保存する必要があるので覚えておきましょう。

レンタルオフィスの使用料は計上できる?

個人事業主の中にはレンタルオフィスを利用している方も少なくないでしょう。レンタルオフィスの使用料は経費として計上できるのでしょうか?

レンタルオフィスといっても、個室を借りる、会議室のみを使用、バーチャルオフィスで住所のみを借りるなど利用形態はさまざまでしょう。これらは借地借家法の適用される建物の賃貸借契約ではなく、施設の利用権契約となるため、確定申告の際は多くの場合「賃借料」にあたり、経費として計上できます。

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(※1)純損失の繰越控除
(※2)国税庁ホームページ

※2016年1月21日に公開された記事を再編集したものです。


監修・木村聡子(きむらあきらこ)
木村税務会計事務所・所長。オンラインサロン「仕事に活かすブログ教室」運営。税理士、ウェブメディアアドバイザー、著者、逆算手帳・認定講師などさまざまな分野で活動中。主な著書に「あなたの1日は27時間になる。」(ダイヤモンド社)、「先輩に聞いてみよう! 税理士の仕事図鑑」(中央経済社)など。

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