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税理士の独立開業に必要なことは? 資金面やオフィスの構え方を解説|税理士監修

税理士は独立開業を目指せる資格です。実際、税理士の資格取得後、あるいは数年の業務経験を経て独立する方は少なくありません。では、税理士が独立開業するまでには、どのような準備が必要なのか。また、独立後スムーズに事業展開するのに、覚えておくべきことは何なのか。ここで詳しく解説します。

税理士が独立開業するまで

まずは、税理士が独立開業するまで道のりを整理しておきましょう。ここでは、資格取得から開業までをステップに分けて見ていきます。

 

1)税理士試験

まずは税理士試験を受け、合格して税理士の国家資格を取得しなくてはいけません。国税庁のホームページを見ると、資格取得には以下いずれかの条件を満たす必要があるとされています。誰でも受験できるわけではないので、あらかじめ確認しておいてください。

 

<学識による受験資格>

・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者

・大学3年次以上で、法律学又は経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者

・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学又は経済学を1科目以上履修した者

・司法試験合格者

・公認会計士試験の短答式試験に合格した者

 

<資格による受験資格>

・日商簿記検定1級合格者

・全経簿記検定上級合格者

 

<職歴による受験資格>

・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者

・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸し付け・運用に関する事務に2年以上従事した者

・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者

税理士試験を受けるための道筋は多様です。中には社会人になってから勉強したり、実務経験を積んだりして資格取得を目指す方もいます。これから税理士試験を目指すのであれば、ご自身の状況に応じてもっとも適した方法を選びましょう。

 

2)実務経験

税理士試験に合格したからといって、すぐに税理士になれるわけではありません。試験合格後、2年以上の税務や会計に関する所定の実務経験を積み、税理士登録を経てやっと税理士として働けます。税理士事務所や会計事務所に勤務するケースが多いですが、一部では企業の経理部などに従事する方もいるようです。

 

3)登録申請

2年以上の実務経験を終えたら、在職証明書などを含む必要書類を税理士会に提出し登録申請を行います。なお、必要書類は申請先の税理士会などによって異なる場合がありますので、以下の日本税理士会連合会ホームページを参考にしながら事前に確認しましょう。

税理士登録が完了するまでは、書類審査や面接などを経て3カ月ほどの期間を要します。登録と同時に独立開業するなら、この期間を踏まえてスケジュールを考えておいてください。

 

4)開業届

税理士が個人で独立開業するなら、事業所の所在地を管轄する税務署へ開業届を提出します。もちろん、自宅を事業所として使用することも可能です。なお、税理士法人を設立する場合には、開業届とは異なる設立手順が必要ですので注意してください。これは個人として独立開業後、他の税理士を社員として雇って法人化する際も同様です。

なお、開業届は実際に開業した後、1カ月以内に行うことが原則とされている点に注意しましょう。基本的に書類不備がなければ、すぐに受理されて届け出は完了となります。

 

◎開業する前に準備すること

開業する前には、ある程度の運転資金を準備しておきましょう。後述しますが、税理士会への登録手続き等にも所定の費用が発生します。また、税理士といっても業務内容や分野は多様です。例えば得意分野に特化したり、個人ではなく法人のみを対象としたり。こうした方針についても、事前に決めておくようにしてください。

また、料金設定も重要です。同業他社などと比較し、相場を踏まえながら顧問料や個別のサービス料金など決めておきます。なお、昨今は税理士を探す際にもインターネット検索が多く用いられるため、ホームページも準備しておいた方が無難です。

税理士の独立開業に必要な費用

税理士が独立開業するには、その過程でいくつか必要となる費用があります。また、独立後の業務を円滑に行ううえで、資金を使い準備すべきものも少なくありません。ここで、代表的なものについて費用を整理しておきます。

 

・税理士会への登録手続き費用

税理士会へ登録申請する際には登録免許税として6万円を納付し、この領収書の提出が求められます。また、5万円の登録手数料も必要です。その他、少額ではありますが、必要書類の印刷費用や証明写真代なども発生します。

 

・税理士会費

地域によって異なりますが、税理士会では入会金や年会費などの納付が必要です。東京税理士会を例に挙げると入会金は40,000円、会館建設費が20,000円、そして毎年81,000円(6,750円×12カ月)の年会費がかかります。

また、税理士は税理士会のほかに支部会へも入会することとなり、ここでも支部会費が発生します。この費用は支部によって異なりますので、事前に各支部へ確認してください。

 

・事務所

自宅以外を事務所とするなら、入居に当たっての初期費用と毎月の賃料、一定期間ごとの更新料が発生します。賃料は地域や物件によって大きく異なりますが、個人居住用に比べて事務所賃貸は割高となることが多いでしょう。また、契約時に発生する敷金・礼金も、2~3カ月分など同様に多く設定されていることが少なくありません。特に賃料は毎月支払うものとなりますので、現実的な範囲で検討するようにしてください。

 

・オフィス家具

仕事に用いるオフィス用具もそろえる必要があります。作業するのに十分な広さのある机や、長時間にわたり座っていても疲れにくく集中できる椅子。また、デジタル化が進む昨今でも税理士は多くの書類を扱う機会が多く、これらを収納するキャビネットなども欠かせません。オフィス家具の価格は実にさまざまですが、快適な業務環境を追求するとなれば、例えば有名なオフィスチェアなら10万円を超えるような製品もあります。

 

・IT関連機器、サービス

パソコンやプリンターなどの基本的なIT機器や、仕事に支障をきたさない十分な通信速度のあるインターネット回線。また、電子化の進む昨今では、データを保管するサーバーなども必要になるかもしれません。例えばパソコンだけでも、業務用となれば15~20万円程度は見ておかなくてはいけないでしょう。

 

・会計ソフト、税務ソフト

税理士が独立開業するなら、業務で使用する会計ソフトや税務ソフトを決める必要があります。基本的には、自分自身が使いやすいソフトを選べば構いません。税理士事務所や会計事務所で実務経験を積んでいたなら、その際に使用していたもので良いでしょう。ただし、いずれの会計ソフトも導入するには料金が発生します。具体的な料金はソフトによって異なりますが、初期の加入料のみで10万円を超えるものも少なくありません。

 

・HPや名刺作成など

このほかにも、独立開業すれば色んなものが必要になります。インターネットが普及した現在では、ホームページも持っておいた方が良いでしょう。税理士を探す際にインターネットが多用されているほか、ホームページがないと信頼性を低下させかねません。より広く顧客獲得を目指すのであれば、ポータルサイトなどに登録することも有効です。ただし、こうしたサービスには登録料の発生するものもあります。

 

また、まだビジネスシーンでは欠かせない名刺や、事務所入り口に設ける看板・プレートを作成することもあるでしょう。そのほかにも、独立開業の準備では細かなコストがたくさん発生します。

税理士の独立開業を支援する融資制度

税理士として独立開業する際、自己資金だけで不足している場合には融資制度を利用する方法もあります。

 

・独立開業を支援する融資制度

 

<日本政策金融公庫>

さまざまな事業融資を提供している日本政策金融公庫。無担保・無保証人で3,000万円までの融資を受けられる「新創業融資制度」や設備資金・運転資金として7,200万円までの融資を受けらえる「新規開業資金」など、創業支援のための融資制度がいくつも用意されています。融資限度額や金利、融資期間などは制度によって異なりますので、詳細は日本政策金融公庫のホームページを確認してください。

<金融機関>

銀行をはじめとした金融機関から融資を受けるのも一つの方法です。ただし都市銀行や地方銀行、信用金庫など、金融機関によって融資内容や諸条件等は異なります。まずは自宅あるいは事務所予定地から近くにある金融機関に出向き、融資について相談してみてください。金融機関とのつながりを持っておけば、独立開業後の追加融資などが必要になった場合にも力になってもらえるかもしれません。

 

・借り入れについて

どのような融資制度でも、基本的に借り入れした資金は返済しなくてはいけません。また、無利子の融資を除けば、返済額は金利の分だけ借入時より高くなります。そのため、事前に必要な資金をしっかり考えたうえで、借り入れを行うようにしましょう。創業資金だけなのか、独立開業後しばらくの運転資金も必要なのかだけでも、金額は大きく変わってくるはずです。借入金を多くし過ぎて、返済困難な状況に陥ることは避けなくてはいけません。

なお、税理士として独立開業すると、顧客から融資制度の利用に関する相談を受けることがあるかもしれません。そうした際には、ご自身の融資利用経験が一つの強みとなるでしょう。

税理士の事務所選び。レンタルオフィスの検討も

税理士として独立開業する場合、事務所選びに頭を悩ませる方は多いでしょう。初期費用にも関わってきますし、独立後の業務環境はとても大切です。ここではいくつかの選択肢を取り上げ、それぞれのメリットなどについてお伝えします。

 

・賃貸オフィスを借りる

賃貸物件は、もっともイメージしやすい手段の一つではないでしょうか。自分だけの集中できる環境、広さや立地なども好きに選べます。家具の配置など、レイアウトを自由に変えられるのもメリットです。

ただし敷金や礼金、保証金など初期費用は高くなります。オフィス家具やIT機器などもゼロから用意する必要がありますし、好条件の物件ほど賃料も上がるでしょう。賃貸オフィスで独立開業するなら、そうした面も含めて資金計画を綿密に考えておく必要があります。

 

・自宅開業

自宅開業は、もっとも手間のかからない方法です。賃料や水道・光熱費など、一部を経費計上できるのもメリットといえるでしょう。初期費用もおさえ、ローコストで事業を開始できます。

ただし自宅住所が公になるほか、顧客が来訪するなどプライバシーを保てなくなるかもしれません。また、相手によっては自宅兼事務所であることから、信頼性を欠くと感じられてしまうこともあるでしょう。なお、自宅が持ち家ではなく賃貸物件の場合、事務所利用を家主に承諾してもらわなければいけません。また、税理士登録の審査の際、自宅事務所の場合は、顧客の情報が守られる環境か、守秘義務が順守できる環境かをチェックされます。

 

・レンタルオフィスを利用する

レンタルオフィスを活用するのも一つの方法です。オフィス家具やインターネット通信など、仕事に必要な環境が備わっているため、賃貸オフィスと比べて初期費用をおさえながら、自宅外に事務所を構えることができます。賃貸物件とは異なり敷金や礼金も不要で、支払いも月々でOK。1カ月からの短期契約が多いため、リスク低減にもつながります。

一般的に、レンタルオフィスには共有スペースがあるため、他業者とのコミュニケーションが取れるなど、レンタルオフィスならではの交流が生まれるかもしれません。

 

独立する税理士におすすめのサーブコープ

税理士が独立開業するまでの流れや必要となる資金、事務所の選び方などについて詳しく解説しました。特に事務所は初期費用にも大きく影響を与えますし、業務効率や顧客からの信頼性などにも関わります。賃貸オフィスや自宅、あるいはレンタルオフィスでそれぞれメリットと注意点があり、自身に合った方法を選ぶことが大切です。

サーブコープのレンタルオフィスは国内各所のビジネス一等地に所在しており、顧客から高い信頼性を得られます。また、受付や電話対応などを専任スタッフに任せることもでき、効率的に業務を進められるでしょう。サーブコープのレンタルオフィスに興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

 

監修・木村聡子(きむらあきらこ)

木村税務会計事務所・所長。オンラインサロン「仕事に活かすブログ教室」運営。税理士、ウェブメディアアドバイザー、著者、逆算手帳・認定講師などさまざまな分野で活動中。主な著書に「あなたの1日は27時間になる。」(ダイヤモンド社)、「先輩に聞いてみよう! 税理士の仕事図鑑」(中央経済社)など。

 

国税庁|税理士試験受験資格の概要

日本税理士会連合会|登録に必要な提出書類等

日本政策金融公庫

 

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