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【税理士監修】還付金とは?個人事業主が確定申告で払い過ぎた税金を受け取る方法、計算方法を解説

公開日 2020.2.12 更新日 2023.12.15

税金を納め過ぎた場合、納税者は「還付金」を受け取ることができますが、そのためには確定申告書を正しく作成する必要があります。本記事では確実に還付金を手にするためのポイントと、受け取り方法や受け取りの時期を解説します。

還付金とは?

還付金とは、所得税などの税金を納め過ぎた場合に、国や地方公共団体から返還される金額のことです。例えば個人事業主やフリーランスの場合はあらかじめ「源泉徴収税額」が天引きされて報酬が支払われていることが多く、確定した所得税額より源泉徴収税額が多い場合、確定申告を行うことによって還付金を受け取ることができます。

個人事業主で以下のような報酬を受け取る場合は、源泉徴収が必要になります。

  • 原稿料や講演料、デザイン料や翻訳料、コンサルタント料など
  • 弁護士や公認会計士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロスポーツ選手や、モデル、外交員などに支払う報酬・料金
  • 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • ホステスやコンパニオンなどに対する報酬・料金
  • 広告宣伝のための賞金(素人が参加するクイズ番組などの賞金)
  • 馬主に支払う競馬の賞金
  • プロ野球選手の契約金など

なお、これらの報酬については、あくまで個人が支払いを受ける場合のみが源泉徴収の対象であり、日本国内の法人が支払いを受ける場合には源泉徴収の対象とはなりません。

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個人事業主が還付金を受け取れるケース

個人事業主が所得税の還付金を受け取れる可能性があるケースは、主に次のものがあります。

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  1. 源泉徴収により所得税を納め過ぎていた場合
  2. 予定納税をしていた場合

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それぞれについて説明します。

源泉徴収により所得税を納め過ぎていた場合

個人事業主やフリーランスが報酬を受け取る際には、源泉徴収によって所得税を差し引かれるケースも多いです。
これらの源泉徴収税額については、「所得税の前払い」としての性質があります。確定申告の際に計算した「年間の所得税」と、報酬受領時に天引きされた「源泉徴収税額」を比較し、前者が大きい場合には差額を追加で納税し、後者が大きい場合には差額の還付を受けることが可能です。
なお事業所得の金額や所得控除、税額控除の適用状況によって「年間の所得税」も変動するため、注意が必要です。
また会社員の場合も同様に、毎月の給与収入から天引きされる源泉徴収税額が過大の場合には、年末調整や確定申告を通じて還付を受けることができます。

予定納税をしていた場合

予定納税とは、確定申告の際に所得税の負担が大きくなり過ぎないように、所得税の一部を分散して納税させるための制度です。
個人事業主については、前年の所得金額や税額に基づいて計算した「予定納税基準額」が15万円以上の場合には、第1期と第2期の2回に分けて所得税を納めなければなりません。
これらの予定納税額については、源泉徴収税額と同様に「所得税の前払い」となるため、確定申告の際には「年間の所得税」から納付済みの予定納税額を控除できます。その際に予定納税額の方が大きい場合には、差額分が還付されることになります。

還付金をしっかり受け取るためのポイント3つ

還付金をしっかり受け取るには、どんな点に注意して確定申告を行えばいいのでしょうか。3つのポイントにまとめました。

「支払調書」をしっかり確認する

自分がすでに納めた源泉徴収税額を確認するには、取引先から交付される上記の「支払調書」を確認するのが近道です。支払調書とは、支払いをした事業者が作成するもので、1年分の支払金額や源泉徴収税額の累計が明記されていますが、取引先が複数にわたる場合は、支払調書は取引先ごとに交付されることになります。

一般的に支払調書は、毎年1月に送付されます。ここに前年分の明細が記載されているため、確実に確定申告に反映させましょう。ただし支払調書自体に誤りがあるケースもあるため、記載された金額が正しいかどうか必ず確認してください。

源泉徴収税額の合計額が、確定申告で算出した所得税額よりも大きい場合は、その差額が還付金として戻ることになります。

■支払調書が届かなかったら?
多くの場合、支払調書は支払側から受取側に送られるものですが、支払側で作成されないケースもあり、すべての取引先からの支払調書が集まらない可能性も考えられます。そうした場合、取引先に支払調書の送付を依頼するか、請求書や取引明細などから1年分の源泉徴収税額を自分自身で集計しましょう。

収入と必要経費をチェックする

所得税を計算するときにベースとなるのが、収入から必要経費を引いた「所得」です。個人事業主の場合、収入と必要経費を漏れなく計上することがポイントになります。必要経費の計上が漏れると還付金が減るのはもちろんですが、逆に収入の計上漏れがあると税務署から追徴税を求められる可能性があります。いずれも間違いのないように注意しましょう。

収入や必要経費をチェックするために、取引明細や領収証などが必要ですので、こうした書類は日頃から保管し、整理しておきましょう。もし取引明細や領収書などがもらえない場合は、金額や日付、内容などをメモなどに残しておくと、失念するリスクを避けられます。

さらに、仕事とプライベートで併用している費用は、計上が漏れやすいので注意が必要です。例えば自宅の一部を事務所として使っていたり、電話やインターネットなどを仕事で使っていたりする費用があれば、仕事に使う割合を計算して必要経費にし、計上を忘れないようにしましょう。

■青色申告特別控除を利用しましょう
青色申告をしている事業者の場合、「青色申告特別控除」を利用して最大65万円を所得から差し引くことができるので、控除の漏れに気をつけましょう。なお、青色申告特別控除を利用するには期限内に確定申告をする必要があります。

医療費や社会保険料などの「所得控除」漏れに注意

前述した通り、確定申告の基準となる所得は収入から必要経費等を引いて計算します。ここで算出された所得から、さらに差し引くことができるのが「所得控除」です。所得控除も漏れがあると還付金が少なくなってしまいます。所得控除はさまざまな種類がありますが、次の表の通り、集計が必要なものと、必要がないものに分かれるのがポイントです 。

パターンAパターンB
集計する必要がないもの集計する必要があるもの
■配偶者控除
■配偶者特別控除
■扶養控除
■障がい者控除
■寡夫(寡婦)控除
■勤労学生控除
■基礎控除
■社会保険料控除
■小規模企業共済等掛金控除
■生命保険料控除
■地震保険料控除
■寄附金控除
■雑損控除
■医療費控除

パターンAの場合、それぞれの所得控除に応じた条件により控除額が決まるため、集計作業は必要ありません。例えば勤労学生控除であれば、条件を満たせば控除額は27万円となります。そのためパターンAについては、それぞれの条件を確認し、合致する場合は確実に控除しましょう。

一方、パターンBについては、条件に合致するかを確認することはもちろんですが、実際に支払った金額などに基づいて控除額を算定するため、集計作業も必要です。社会保険料控除であれば、毎年1月1日から12月31日の期間に納付した保険料を漏れなく集計し、確定申告書に反映しなくてはなりません。

こうした集計作業をするときに利用するのが、毎年11月頃に保険会社などから送られる証明書です。この証明書には、1年分の保険料など、確定申告のために必要な情報が記載されています。ここで注意が必要なのが、例えば生命保険を複数の会社で契約している場合です。この場合、保険会社ごとに証明書が送られるため、複数の証明書に記載された金額を自分で集計しなくてはなりません。

ちなみに、パターンBのなかでも、災害や盗難などで被害を受けたときに使える「雑損控除」は、証明書が送られるものではないため、自分自身で根拠資料などを集め、控除額を計算する必要があります。

■所得控除証明書は原本の保管を忘れずに
所得控除に関する証明書は、必ず原本を保管しておきましょう。証明書が手元に届かない場合や紛失した場合は、保険会社等に発行を求める必要があります。

個人事業主の還付金の計算方法

個人事業主が還付金を計算する方法を、「収入500万円の場合」を例に解説します。

■例:事業収入500万円、必要経費100万円、青色申告特別控除額65万円、所得控除額85万円、源泉徴収税額50万円の場合

まず事業所得の金額は、事業収入から必要経費および青色申告特別控除額を差し引いて算出するため、以下のように計算します。

1.事業所得:500万円-(100万円+65万円)=335万円

次に事業所得から所得控除を差し引くことで、課税所得金額を算出しましょう。

2.課税所得金額:335万円-85万円=250万円

課税所得金額を計算できたら、所得税の速算表に当てはめて年間の所得税を計算します。
なお令和19年までは復興特別所得税として、所得税額の2.1%が上乗せされるため、それぞれ以下のように算出してください。

3.所得税額:250万円×10%-9万7,500円=15万2,500円
4.復興特別所得税:15万2,500円×2.1%≒3,202円(円未満切捨て)
5.合計:3+4=15万5,702円

したがってこの事例の場合には、1年間で納めるべき所得税および復興特別所得税の合計額は15万5,702円となりますが、すでに天引きされた源泉徴収税額が50万円あるため、最後に精算を行います。

6.納税額:15万5,702円-50万円=▲34万4,298円

このケースでは、1年間で納めるべき所得税および復興特別所得税の合計額よりも、源泉徴収税額の方が大きいため、確定申告を行うことによって、差額の34万4,298円について還付を受けることが可能です。

このように個人事業主にとっては、事業収入や必要経費だけでなく、源泉徴収税額に関しても自分自身の納税額や還付額へダイレクトに影響するため、間違いのないように集計しましょう。

還付金を受け取る方法とスケジュール

還付金の受け取りには、預貯金口座への振り込みと、最寄りのゆうちょ銀行各店舗または郵便局に直接出向いて受け取る2つの方法を選択することができます。

また、申告書の記載内容や添付書類などの確認に時間を要することから、国税庁は還付金の支払い手続きには「おおむね1カ月から1カ月半程度の期間を要する」としています。ただし、e-Tax(電子申告)で1月・2月に提出したものについては、2~3週間程度で処理が可能とも記載しているので、e-Taxを利用すると還付金は早めに受け取れそうです。

いかがでしたか?個人事業主の方は、今回ご紹介したポイントを参考に、正しい確定申告をして、確実に還付金を受け取りましょう。

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参照:国税庁「税金の還付」国税庁「予定納税 」国税庁「所得税の税率 」

監修:服部 大
服部大税理士事務所 /合同会社ゆとりびと 代表社員。税理士、中小企業診断士。2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、税務顧問だけでなく、スポット税務相談やクラウド会計導入支援など、経営者を幅広く支援できるように奮闘中。執筆や監修業務も力を入れており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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