公式HP サーブコープブログ知識・ノウハウこれだけは知っておきたい!第4次産業革命のキーワード「IoT」<後編>

これだけは知っておきたい!第4次産業革命のキーワード「IoT」<後編>

    前編では、「IoT」=モノのインターネットは、製造業のあり方に大きな変革をもたらすと説明しました。今回後編では、IoTの事例や課題について考えます。

    ■「製造業のサービス業化」進める事例も

    ドイツでは、産官学共同で国家的プロジェクト「インダストリー4.0」を進めています。「インダストリー4.0」とは、複数の工場と機械をインターネットで接続してひとつのシステムとし、人工知能を用いて生産を最適化する試みです。生産に関わるあらゆるデータをネットワークでつなぐことによって、工場が自律的に動くようになり、生産ラインのリアルタイムな状況把握を実現しました。進捗状況を確認したり、顧客の要望に合わせた製品のカスタマイズ生産を可能にしています。

    一方、「製造業のサービス業化」という観点で世界から最も注目を集めているのが、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)が打ち出した、IoT活用の経営戦略「インダストリアル・インターネット」です。さまざまな製品に多数のセンサーを取り付け、ネットワーク経由で稼働データを収集して解析し、製品の保守や運用、新しい製品・サービスの開発に生かそうという構想です。

    その他、IoTの利活用による新しい製品・サービスが生み出される領域として、以下のような業界・業種が注目を集めています。

    • 電気・ガス・水道など社会インフラの遠隔監視、業務効率化、サービス向上
    • 自動車の遠隔地からのモニタリングやサポート
    • 生体情報モニターなどのヘルスケアや、在宅医療・僻地医療などの医療分野
    • ホームオートメーション

    こうした分野には数多くの企業が参入し、世界的に激戦区となっています。

    ■IoTの6つの課題とは…?

    世界的に広がっているIoTですが、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏は、2015年1月にIBMが発表したホワイトペーパーを引用しながら、IoTの問題点を次のように指摘しています。

    (1)セキュリティ面の課題

    インターネットは脆弱な通信システムであり、モノがサイバー攻撃の踏み台にされる恐れがある。この問題は、IoT が普及するに従って悪化していく。

    (2)コストが高すぎる

    これまでIoTの応用は、ジェットエンジンの監視、スマートメーター、遠隔地医療など、高付加価値のものに限定されていたため、経済的視点を考慮する必要がなかった。しかし、対象範囲が広がってスケールが拡大すると、コストの問題が顕在化してくる。

    コストが高くなるのは、これまでの情報処理モデルを応用しようとするからだ。クラウドのコストは高いし、情報処理を行う中間者が必要なため、コストはさらに高くなる。

    (3)入ったら出られなくなる

    IoTの供給者の立場から見ると、現在の方式は「入るのは簡単だが、出られなくなる」という深刻な問題を抱えている。それは、ソフトウェアが短期間で大きく進歩するのに対して、モノの耐用期間は長いからだ。

    古くなったソフトウェアはメンテナンスを続けなければならないが、それは供給者の企業にとってたいへんな負担になる。自動車の耐用期間は10年くらい、住宅は40年くらい、道路などの社会資本は50年くらいあるが、その期間のソフトウェアのサポートを供給者の企業が継続していかなければならないとすれば、利益の上がらないビジネスになってしまう。IoTでは、この問題に対する解決策が考えられていないのだ。

    (4)つないだだけでは価値は生まれない

    ホームオートメーションでどれだけの価値が生み出されるかは、疑問だ。トースターをインターネットにつなげても、それだけではおいしいトーストができるわけではないように、機器を接続したからといって価値が生まれるとは限らないのである。

    (5)利益を上げるビジネスモデルがない

    ホームオートメーションなどのIoTで利益を上げる方法が見出されていない。デバイスをインターネットにつなげればユーザーデータを得られることは事実だが、そのデータが売りものになるかは疑問

    (6)信頼性を要しない方式が必要

    IoTが普及すれば、2050年頃には、それに接続するデバイスの数は1000億を超えると考えられている。このような大規模のシステムを信頼のおけるパートナーで集中して管理・運営するのは、非常に高いコストを要する。また、ユーザーのプライバシーを守る必要もある。従って、オープンソースへの移行が不可欠だ。

    IBMも、この問題を解決するため、ビットコインの基礎技術であるブロックチェーン技術をIoTに用いることが必要だとしている。実際、IBMは、故障修理や洗剤発注などを自動的に行う洗濯機のシステムを、サムスンと共同で実験的に開発している。

    野口氏は日本のIoTについて「さまざまな機器をつなげることは得意だとしても、それが全体として経済的に意味のあるシステムにできるかどうかが問題であり、従来の集中・集権の発想から抜け出さなければならない」と、警告を発しています。

    IoTが起こす第4次産業革命の入り口に立つ今、モノづくりも、ソフトウェアも、生き残りがかかる大きな岐路に直面していることを認識しなければならないでしょう。

     

    ※参照

    『DIAMOND online』野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

    「IoTの普及には、ビットコイン技術の応用が不可欠だ」2015年9月10日付記事

    http://diamond.jp/articles/-/78225

    『週刊ダイヤモンド』2015年9月26日号

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