東京・大阪のオフィス賃料が上昇。最新のオフィス動向と今後の予測
都心部を中心に、オフィス賃料の全国的な上昇傾向が続いています。事業拡大や新規ビジネスの立ち上げにオフィス移転や新設を検討中の方向けに、東京・大阪で注目のエリア動向から、価格高騰中の人気エリアで魅力的なオフィススペースを確保する方法まで解説します。
東京オフィスの賃料増加傾向続く
「高度利用地」、つまり高層ビルなどが集積するニーズの高いエリアを中心に国土交通省が毎年取りまとめる「主要都市の高度利用地地価動向報告」2025年6月発表によると、全国すべてのオフィス街で地価の上昇が1年以上にわたって続いています。
中でも顕著なのが東京エリアでの地価上昇です。
地価上昇率が3%~6%未満という高い水準で起こっているエリアが8.6%と、全国平均はもちろん、大阪・名古屋など他主要エリアよりも高い割合となっています。
出典:国土交通省 不動産・建設経済局 地価調査課「主要都市の高度利用地地価動向報告 令和7年6月」
オフィス賃料も地価上昇と同じく上昇傾向が続いています。三鬼商事「オフィスデータ」調査によると、東京ビジネス地区の2025年5月時点の平均賃料は20,776円と3年ぶりに2万円台を回復しました。
出典:三鬼商事「オフィスデータ 東京ビジネス地区/2025年05月時点」
コロナ禍をきっかけとしたオフィス縮小の流れは2024年1月頃を境に上昇に転じ、以降東京ビジネス地区のオフィス平均賃料は続伸で推移しています。
賃料水準が高い千代田区・丸の内エリアでさらに上昇
ビジネスの「一等地」とも言うべきオフィス街の代表的なエリア、東京駅丸の内周辺は金融機関をはじめ大手企業の本社が集まる場所であり、好調な企業業績を背景にビルグレードや立地の優位性を重視する企業からの引き合いが多く、空室率が低い環境があります。
三鬼商事「オフィスデータ」調査によると、千代田区全域での平均オフィス賃料も2025年5月時点で22,288円と、大型再開発事業が進行し、IT系企業を中心に新築ビルへの移転・増床が多い渋谷区の24,621円に次ぐ高い平均賃料です。
円安を背景に外資からの投資ニーズもあり、地価・オフィス需要共に堅調に推移することが見込まれています。
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東京オフィスの空室率大幅回復
オフィスビル賃料と密接に関係するのが、供給されたオフィス床面積全体のうち、テナントが入居していないフロアの面積を示す空室率です。
空室率の高い状況は防犯面、認知面、投資回収という点でも避けるべきですから、周辺ビルを含めて空室率が高い場合、少しでも空室率を改善するためフリーレントや賃料・管理費などを下げて入居を誘致する必要があります。
一般的に、オフィスの空室率は3~5%程度が適正数値とされています。この数値を越える空室率がある場合は賃料の下落要因となりますが、三鬼商事「オフィスデータ」調査によると、東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の2025年5月時点の平均空室率は3.56%で、前月比0.17ポイント下げました。
特に、2025年5月は縮小や統合による大型解約があった一方、竣工1年未満のビルに大型成約が見られて新築ビルの空室率が26.9%から22.96%と一気に3.3ポイント改善したこと、既存ビルでも建替えに伴う成約が進んだことから、東京ビジネス地区全体の空室面積はこの1か月間で約1万5千坪減少しました。
1年前の2024年5月時点の同地区平均空室率は5.48%だったことから、この1年で順調に空室率が改善してきていることがわかります。
この旺盛な企業ニーズを取り込もうと、既存ビルでもリニューアルやリノベーションに取り組む動きが活発化しており、幅広い賃料帯で空室率が改善する傾向が続きます。
大阪オフィス賃料も上昇傾向
東京と同じく、大阪のオフィス賃料も緩やかながら上昇傾向が続いています。
2025年5月の大阪ビジネス地区オフィス平均賃料は12,333円と1年前の2024年5月時点12,097円と比較して236円と微増ながらじわじわと上昇を続いています。
大阪で最も平均賃料が高い梅田地区の空室率は3.79%と堅調です。旧北ヤード、大阪駅北地区(うめきた)の再開発が2027年度までに進行中で、2025年3月にはグラングリーン大阪南館内に新しいオフィスが完成しています。
また、インバウンドでにぎわう心斎橋・難波地区の空室率が1.51%と低く抑えられている背景には、新規物件供給が比較的少なく、需要供給バランスがひっ迫していることなども影響があります。
大阪エリアはオフィス街と商業エリアが近接・混在し、オフィス街のなかにも住居用マンションの開発ニーズが旺盛なこともあり、土地取得や築年数の古いビルの建て替え需要なども旺盛で地価はこれからも堅調に推移していくと見込まれます。
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オフィス賃料が上がっている要因は?
オフィス賃料が上がっている要因について、需要側・供給側ともに広く認知されているのが次の3つのポイントです。
- 出社回帰・オフィス回帰の動き
- オフィス環境への投資
- 地価、建築費や運営費等の高騰に伴う賃料値上げ
それぞれのポイントについて解説しましょう。
出社回帰・オフィス回帰の動き
「働き方改革の一環としてのリモートワーク制度導入」から「コロナ禍での一時的措置としての導入」を経て、企業規模や業種を問わず広がりを見せてきたリモートワークですが、先行して導入してきたGAFAをはじめとする米国IT企業がフルリモートの禁止や週に規定以上のオフィス出社を推奨し始めた流れが、日本国内にも広がってきています。
リモートワークによるデメリットを補完する「対面でのコミュニケーション」の機会を確保しようとするものです。
この流れで、いったん縮小したオフィスを拡大しようとする動きが出始めています。
2014年から「どこでもオフィス」制度として先進的なリモートワークスタイルを推進してきたLINEヤフー株式会社(当時:ヤフー株式会社)が2025年4月以降、すべての従業員を対象に週1回ないし月1回の出社を要請するなど、全社的にリモートワークが定着してきた企業がオフィス回帰の動きを先導していることに注目です。
オフィス環境への投資
中途採用・新卒採用ともに、求人倍率は高止まりの状況が続いています。若年労働人口の減少が続くことが確実な状況下で優秀な若手人材を確保したい企業は業種・企業規模を問わず少なくありません。
そのような環境下で比較的速やかに「企業の魅力」を向上させることができるのが働く場所、つまりオフィス環境への投資です。駅からの利便性はもちろん、最新の設備を備え、デザイン性の高いオフィス空間を用意することは明確な訴求ポイントになります。
利便性の高いエリアにある大型複合ビルでは、飲食やトレーニングジム、医療機関、金融機関など、社員の毎日の暮らしに便利な施設も入居しています。働く場所としてどのようなオフィスビルを選ぶか、「従業員の働きやすさ」という視点からも検討する企業が増えています。
地価、建築費や運営費等の高騰に伴う賃料値上げ
マンションの価格高騰と同じように、オフィスビルについても再開発の土地取得費、建て替えの建築費およびビル管理運営費など、全般的にコストが増加しています。
円安による資材コストだけでなく、最低賃金の上昇・建築業界の高齢化・法改正による人手不足を背景とした労務コストはもちろん、オフィスビルの維持管理費も反映せざるを得ません。
これらの建築費高騰を背景に、建て替え時期の延期や建て替えではなく一部改修に変更されるケースも増加しており、直近の新築オフィスの供給量はコロナ禍以前と比較して減少傾向にあります。
今後も賃料上昇は続く見通し
オフィス賃料が上がっている要因として考えられるのは以下の2点です。
- 若年層の人口減少による労働者不足
- 資源コスト上昇
これらの状況は当面解消の見通しが立ちません。つまり、数年内のうちにオフィス賃料が下がる方向へ大きく状況が変化する可能性は低いということです。
賃料上昇幅やスピードについては、円安ほか海外情勢にも影響されますが、大きな方向性としては今後もオフィスの賃料はしばらく上昇傾向が続く見通しです。
フレキシブルオフィスの最新動向は?
「出社回帰・オフィス回帰の動き」
「求人難を解消する、魅力的なオフィスへの投資」
これらの地価高騰における背景要因を踏まえ、「フレキシブルオフィス」についての最新動向も確認しておきましょう。
首都圏だけでなく、地方でも需要が伸びている
多様な働き方の選択肢としてニーズが増えてきた「バーチャルオフィス」「レンタルオフィス」「コワーキングスペース」などのフレキシブルオフィスサービス。オフィス回帰の動きやビル賃料コストの上昇で一見縮小につながる条件のように見えますが、むしろその
市場規模は伸び続けています。
ザイマックス不動産総合研究所の「フレキシブルオフィス市場調査2025」によると、東京23区内のフレキシブルオフィス (1,777件)の総面積(推計含む)は約30.8 万坪、オフィスストック(1,314万坪)に占める割合は約2.3%となりました。
出典:ザイマックス不動産総合研究所|フレキシブルオフィス市場調査2025
特に多数のオフィスが集中する首都圏で、利便性の高いグレードのビルや好立地への新規出店・大型化で差別化を打ち出す傾向があります。
また、首都圏に限らず、関西圏での需要も堅調です。名古屋や福岡といった拠点ニーズの高いエリアでの需要も伸びているほか、地方創生やリモートワークの浸透により、地方拠点でのコワーキングスペースの開設も相次いでいます。今後は、全国的な需要の底上げが見込まれます。
人材確保のために拡大するフレキシブルオフィス需要
コロナ禍の影響でのオフィスサイズ縮小トレンドは落ち着き、出社回帰でオフィスを移転・拡大する企業が増えているのは前述の通りです。大企業においても、サテライトオフィスやフレキシブル拠点の活用が進み、固定化コストの回避と業務効率向上を狙った投資が継続中です。
一方、人材獲得競争の激化から、テレワークなど柔軟な働き方を求める従業員・転職希望者は非常に多く、そのニーズに応えることも必要です。近年では会社を選ぶ際の重要なポイントとして「在宅勤務・リモートワークができる環境」を挙げる新卒学生も少なくありません。
仕事と家事育児、介護との両立やワークライフバランスは、企業にとっても従業員にとっても重要な課題であり、柔軟な働き方を支える環境の整備は引き続き強く求められることから、企業側も対応が不可欠となっています。
また、遠方に住んでいる優秀な人材を獲得するために、オフィス出社するメンバーとテレワークをするメンバーが混在するハイブリッドチームを持つ企業も出てくるなど、この動きはさらに地方にも波及する見込みです。
副業・兼業の流れも大きく影響している
副業や兼業、フリーランスの市場規模も大きく成長しています。将来の経済的な不安解消やスキルアップ、会社に依存せず好きなことを仕事にしたいなどのニーズから、副業や兼業に挑戦する人が増えています。個人単位で契約できて気軽に使えるコワーキングスペースや、低価格・短期間で起業ができるバーチャルオフィスの需要は今後も伸びるでしょう。
株式会社インディードリクルートパートナーズが2025年5月に公表した「兼業・副業に関する動向調査2024」によると、2024年の副業実施者数は前年対比で10%以上増加しており、多様な働き方への対応がビジネスインフラに求められていることがうかがわれます。
いずれにせよ、契約形態・アドレス・立地・機能など、多くの選択肢の中から自社のニーズに合わせてフレキシブルに組み合わせることができる環境は社会の変化に伴ってますます求められていると言えます。
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サーブコープのオフィスの魅力
フレキシブルオフィスのリーディングカンパニーとして世界19カ国に150以上の拠点を構えるサーブコープは、日本国内のオフィス街でも街のランドマークとなるビルに柔軟性の高いオフィスサービスを展開しています。
「地下鉄出口に直結」
「ビル名だけで場所がわかる」
「高層階で展望抜群」
「新築ビルで最新設備と高い防災体制が整っている」
これらの特徴を備えたオフィスビルを自社ビルもしくは一般の賃貸オフィスで構える場合、初期投資だけではなく毎月の運営費に必要な金額は非常に大きなものになります。
オフィスに必要な人数や求める機能を的確に分析することで、上記のような魅力的な特徴を備えた「ワークスペース」を得ることができます。これが、サーブコープが運営するフレキシブルオフィスならではの魅力のひとつです。ぜひ、実際に現地をお確かめください。
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まとめ(2025年の都心部オフィス賃料の上昇傾向を見据えて早めの対応を)
オフィス賃料は固定経費のなかでも大きな割合を占めるのが一般的な上、売り上げや利益が下がってもすぐに経費削減に対応するのが難しいことは言うまでもありません。
とは言え「仕方がないこと」としてオフィスの諸問題に取り組まないことは、中長期的に経営に悪い影響が発生するリスクを放置することになります。
長期的な視点が必要だからこそ、自社に合ったオフィスを選定するために必要な情報収集を定期的に行い、早めの対応に取り組みましょう。
サーブコープのワークスペース、サービスに関するお問い合わせ
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