サーブコープブログ知識・ノウハウ損益分岐点売上高とは? 分かりやすい計算式を紹介!安全余裕率の改善策を専門家がアドバイス

損益分岐点売上高とは? 分かりやすい計算式を紹介!安全余裕率の改善策を専門家がアドバイス

損益分岐点売上高とは、売上と費用が等しく、利益も損失も出ていないときの売上高のこと。

赤字を回避するために、最低限として獲得しなければならない売上といえます。この損益分岐点売上高に関連する専門用語の解説とともに、役立つ計算式や専門家によるアドバイスを紹介します。

 

損益分岐点売上高とは?

前述したように、損益分岐点売上高とは赤字を回避するうえで獲得すべき最低限の売上。1つのケースを挙げて考えてみましょう。

<例>

競合他社が同様の商品の販売を開始したため、売上高の10%減少が見込まれる。では、当期の想定利益はいくらになるのか?

「売上が10%減少するなら、利益も10%減少する」と考えるのは誤りです。売上高が減少しても、すべての費用が同じように減少するわけではありません。なぜなら、材料費や外注費のように売上高に伴って減少する費用がある一方、労務費やリース料、広告宣伝費などは減少しないからです。

変化の激しい現代において、即座に想定利益を計算できる損益分岐点は非常に役立つ知識といえます。ただし、売上高の変化に伴う利益を計算するには費用を分解し、損益分岐点を把握しなくてはいけません。このために、まずは損益分岐点の概略、そして関連する専門用語について確認しておきましょう。

 

損益分岐点とは?

売上高と費用が同じ金額の場合、当然ながら利益はゼロです。この損益がトントンの売上高のことを「損益分岐点売上高」といいます。実際の売上高が損益分岐点売上高より多いと利益が発生し、少ないと損失になります。これをグラフで表すと下記の通りです。

赤の斜め線が売上高、黒の斜め線がコストを表しています。そして、2つの線が交わる点が損益分岐点です。損益分岐点より右側へ行くほど利益が増加し、反対に左側だと損失、つまり赤字となります。なお、損益分岐点を計算するには、以下を理解することが大切です。

変動費=売上や製造に応じて増減する費用

固定費=売上や製造にかかわらず一定額発生する費用

限界利益=売上から変動費を引いたもの

損益分岐点は決められた計算式で算出できますが、計算するためにはコストを変動費と固定費に分解する必要があります。損益分岐点の計算式、そして変動費や固定費については、後ほど詳しく説明します。

 

なぜ「損益分岐点」が重要なのか?

 企業の存在目的の一つは「収益の最大化」です。売上を最大にし、コストを最小・圧縮する方法を常に追究する必要があります。

損益分岐点は、事業ごとの売上高や限界利益、固定費の関係から目標利益の獲得を見出す手法です。損益分岐点を活用すれば目標利益に必要な売上高を計算したり、利益を増やすための改善施策を売上・変動費・固定費といった複数の視点から検討したりすることができます。

また、事業部や工場、店舗、営業マン、商品などに細分化して損益分岐点を計算し、各人の目標に落とし込むことで、経営と現場の目線を合わせることにも応用可能です。経営者や経理だけではなく、利益達成に責任を持つ管理者や営業マンにとって、損益分岐点の知識は必須といえるでしょう。

 

専門用語解説

損益分岐点については、変動費や固定費、限界利益といった会計用語を理解する必要があります。また、応用として損益分岐点比率や安全余裕率、目標利益達成売上高などの用語もありますので、具体例を交えながら詳しく解説しましょう。

 

<変動費とは?固定費とは?>

変動費

売上高に応じて増減する費用のこと。小売業では商品の仕入費用、製造業では材料費、外注費などが代表的な例です。その他にも、光熱費や運搬費などが該当します。生産や販売が増えると当然売上高は増加しますが、同様に比例して増える費用が変動費の特徴です。

固定費

売上にかかわらず一定金額発生する費用のことです。例えば工場で働く人の給与は、生産数量が減ったからといって減らすわけにはいきません。労務費の他には、減価償却費、税金、修繕費、賃借料、その他諸経費が固定費に該当します。

損益分岐点を計算するには、すべての費用を変動費または固定費に仕分けることが必要です。これを費用の「固変分解」といいます。一つずつの費用について、変動費か固定費かを仕分けるのは大変です。そのため、実務的には勘定科目ごとに変動費、固定費を決める方法が一般的でしょう。勘定科目とは、経理が日々の取引を帳簿に記入する分類項目のことです。

すべての費用が、明確に変動費と固定費に仕分けられるわけではありません。労務費は固定費として扱いますが、残業代は生産量と連動し変動的な要素を含みます。また、電気やガス、水道の使用料金は変動費ですが、基本料金は固定的に発生するものです。費用の発生実態に合わせて変動費と固定費に区分するのが正しいのですが、実務では変動費か固定費のいずれかに割り切って区分します。

 

<変動費比率(%)と固定費比率(%)>

変動費比率と固定費比率は、変動費と固定費がそれぞれどの割合で売上高に占めるのかを表す指標です。それぞれ、以下のように表します。

変動費比率(%)=変動費÷売上高×100

定費比率(%)=固定費÷売上高×100

 

変動費比率は低いほど効率的に利益を稼ぐことができ、日本企業の平均値は50~60%前後です。なお、変動費比率が高い企業には、次のような特徴があります。

  • 設備投資、初期投資があまり掛からない
  • 費用の大半が売上と連動するので、ローリスクローリターン
  • 薄利多売であり、値下げによる利益への影響が大きい
  • スーパーなどの小売業があてはまる

 

固定費比率も低いほど良い指標です。平均的には35~40%の企業が多く、製造業や宿泊サービス業などでは高くなる傾向があります。固定費比率が高い企業に挙げられる特徴は、次のようなものです。

  • 設備投資、初期投資が多額であり、新規参入障壁が高い
  • 売上と連動しない費用が多く、ハイリスクハイリターン
  • 石油化学工業、鉄鋼業、ホテル業といった装置産業があてはまる

 

変動費率が高い企業では、損益分岐点が低く利益が出やすい反面、大きな利益は上げにくい一方、固定費比率が高い企業は、損益分岐点は高いですが、それを超えると大きな利益が望めることになります。

 

<限界利益>

限界利益は、売上高から変動費のみを差し引いて計算します。差し引いた残りは「固定費」と「利益」です。

限界利益=売上高-変動費=固定費+利益
「限界利益」とは、生産や販売が一つ増えるごとに増える利益のこと。英語では「Marginal Profit」といい、略してMPと表示されることもあります。収益管理において非常に重要な利益ですので、ぜひ覚えておきましょう。

限界利益は売上の増減とリンクしますので、販売から得られる直接的な利益といえます。限界利益が多ければ固定費を回収し、最終的な利益を生み出すことが可能です。反対に限界利益がマイナスであれば、販売すればするほど赤字が膨らむことを意味し、事業の撤退を判断する必要があります。

限界利益は事業の継続・撤退といった経営判断の根幹に使用されることから、とても重要な指標といえるでしょう。

 

<限界利益率(%)>

限界利益率とは、売上高に占める限界利益の割合のことです。限界利益率が高ければ、早く固定費を回収し利益を生み出すことができます。

限界利益率(%)=限界利益÷売上高×100

日本企業の限界利益率は40%程度が平均です。商品の仕入れなど変動費の割合が大きく、一般的に薄利多売といわれる小売業では30%前後と低くなります。一方、変動費の少ない情報通信やサービス業では60%と高くなります。なお、限界利益率は、(1-変動費比率)でも算出が可能です。

<損益分岐点比率(%)>

損益分岐点比率は、「実際の売上高」に占める「損益分岐点売上高」を割合で示したもので、以下の計算になります。

損益分岐点比率(%)=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100

<例>

損益分岐点売上高 400万円

実際の売上高   500万円

上記の場合、損益分岐点比率は80%となります。

 

損益分岐点比率は、現状からどれほど売上が低下すると利益がゼロになるかを表しています。つまり、不況への抵抗力を示す指標といえるのです。なお、損益分岐点比率の適正水準は以下の通りとなっています。

  • 80%以下:優良企業
  • 80~90%:平均的な企業
  • 90~100%:改善が必要な企業
  • 100%以上:損失が発生している企業

大企業(資本金10億円以上)では60%、中規模企業は85%、小規模企業は93%程度が平均です(中小企業庁データより)。

 

<安全余裕率(%)>

安全余裕率は、「実際の売上高」と「損益分岐点売上高」にどれくらいの差(余裕)があるかを割合で示した指標。以下の計算で求められます。

安全余裕率(%)=(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高×100

安全余裕率が20%であれば「現状より20%までなら売り上げが下がっても赤字にならない」ことを表し、パーセントが高いほど良い指標です。なお、損益分岐点比率と安全余裕率を合計すると必ず100%になります。

例えば実際の売上高が10百万円、損益分岐点売上高が8百万円の場合は以下の通りです。

<例>

  • 損益分岐点比率=8百万円÷10百万円=80%
  • 安全余裕率=(10百万円-8百万円)÷10百万円=20%

これは、図で表すと下記のようになります。損益分岐点を基準に、実際の売上高までの比率を表したものが安全余裕率と損益分岐点比率です。同じ意味合いのことを、別の視点から表現していることが分かるでしょう。

 

<目標達成売上高>

損益分岐点の応用版として、利益目標額から逆算して達成に必要な売上高を算出することができます。

目標達成売上高=(固定費+目標利益)÷(1-変動費比率)

 

例えば「売上高10百万円、変動費6百万円、固定費2百万円、利益2百万円」の企業が、目標利益を倍の4百万円に設定した場合は以下の通りです。

目標達成売上高=(固定費2+利益4)÷(1-変動費6÷売上10)

 

この計算から、目標利益である4百万円を達成するには、15百万円の売上高が必要と分かります。

 

損益分岐点の求め方。計算式と分かりやすい具体例

損益分岐点売上高の計算は、以下のように表されることが多いでしょう。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

損益分岐点売上高は、利益がゼロになる売上高のこと。そのため、限界利益と固定費がイコールになれば良いわけです。例えば限界利益率が40%、固定費が2百万円の場合は、以下のような計算になります。

<例>

売上高x×限界利益率40% =限界利益

限界利益-固定費2百万円=ゼロ

2つの式を組み合わせると、固定費2百万円を限界利益率40%で除することによって、損益分岐点売上高5百万円を計算することが可能です。念のため、検算してみましょう。売上高5百万円のとき、限界利益率は40%なので限界利益は2百万円です。固定費も2百万円なので、利益はゼロとなります。

 

損益分岐点図の書き方は以下の手順です。

  1. 縦軸を総費用、横軸は売上高とする
  2. 左下ゼロから右上に対角線を引く(売上高線)
  3. 横軸に水平となる固定費線を引く
  4. 固定費線上に積み上げるように変動費線を引く(総費用線)

売上高線と総費用線の交点が損益分岐点となります。売上高がゼロであっても、固定費は発生することがポイントです。ちなみに、売上高線と総費用線がいつまでも交わらない場合は、限界利益がマイナスになっていることを表します。

下記サイトでは売上高と変動費、固定費に金額を入力すると、損益分岐点売上高や限界利益率が自動で計算できます。検算用として活用してみてください。

▼参考:損益分岐点計算ツール

https://calculator.jp/money/breakeven/

 

ワインポイントアドバイス!安全余裕率を改善するには?

安全余裕率は「現状より何%売上が落ちても赤字にならないか?」を表す指標です。ここで、改善ポイントについてご説明しましょう。安全余裕率が20%以上あれば、当面は赤字の心配はないと想定されます。ただし10%未満であれば、改善に向けた取り組みが必要です。

安全余裕率を引き上げるには、「実際の売上高を上げる」か「損益分岐点売上高を下げる」いずれか2つの方法が考えられます。さらに後者には、固定費を下げる方法と限界利益率を高める方法の2つがあります。

 

対策案1) 売上高を高める

販売価格の値上げや新規顧客の開拓、商品取扱数の増加による販売数量の増加などの方法があります。新商品の開発によっても売上高増が見込めるでしょう。

 

対策案2) 固定費を下げる

不要なリースなどの解約、節電やカラーコピー禁止といった経費削減、事務用品のまとめ買いによる価格引き下げ交渉などがあります。もう少し踏み込むのであれば、一部業務のアウトソーシング化やパートタイマー、人材派遣の活用による労務費の変動費化によっても固定費の切り下げが可能です。

また、事業運営において大きな固定費となるのが賃貸オフィスなどの賃料です。オフィススペースを縮小したり、小規模事業者であれば思い切って解約し、レンタルオフィスを活用したりするのも損益分岐点売上高を下げることにつながります。

対策案3) 限界利益率を高める

販売価格の値上げや変動費の引き下げによって、限界利益率を高めることが可能です。変動費の引き下げは、仕入れの値引き交渉、材料使用料の削減、不良品の削減などがあります。

販売価格の値上げや販売数量の増加は、実現すれば大きな効果が見込めるでしょう。しかし、市場環境や競合他社といった外部要因の影響が大きく、自社の努力で改善できる余地は限られています。まずはコストを勘定単位で精査し、引き下げ余地を地道に検討することが必要です。

 

まとめ

コストを変動費と固定費に分解し、限界利益率や損益分岐点を把握することで、将来の収益予測や複数の改善方法へアプローチできます。売上の増減は、景気など外部要因が大きいでしょう。しかし、安全余裕率の改善は固定費や変動費の削減によっても実現でき、それらが利益の増加や赤字からの脱却へつながります。損益分岐点の知識は、利益管理能力の向上には必須といえるでしょう。

 

 


文・紫藤唯人(しとうゆいと)

大手製造業(鉄鋼メーカー)工場配属の経理財務担当者として中途入社。固定資産管理や棚卸管理といった財務会計をスタートに、コスト分析、予算・中期計画の立案などの管理会計や公認会計士対応、税務署対応、内部統制、営業との販売戦略立案など幅広く経験。

 

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