バーチャルオフィスで行政書士の開業は可能?要件や活用法を解説
バーチャルオフィスは、事業を行うにあたって必要な連絡先住所や電話番号を比較的安価な料金で利用できる、利便性の高いサービスです。ただし、行政書士の場合は、バーチャルオフィスを開業時の「事務所」として登録申請できないことに注意しなければなりません。本記事では、行政書士の開業時の事務所の要件や、登録が可能な物件・オフィスサービスの種類について解説します。
行政書士の開業時に必要な事務所要件とは?

行政書士の開業時には、事務所の所在地を管轄する行政書士会を通して、日本行政書士連合会に「事務所」の登録申請が必要です。ただし、行政書士の事務所は「ただ住所と建物があれば良い」というわけではなく、要件が定められています。細かな事務所要件は行政書士会によって見解が異なる可能性もあるため、不明点は事前に問い合わせておくと安心です。ここでは、代表的な3つの事務所要件を紹介します。
事務所として使用できる物件であること
行政書士の事務所は、物件の所有者や管理会社から、事務所としての「使用承諾」を得られる物件であることが求められています。例えば、事業用への利用が許可されていない住居用の集合住宅や、公営住宅・官舎などを、行政書士の事務所として利用することはできません。
業務上の秘密を保持できる独立性があること
行政書士には守秘義務があるため、業務で扱う個人情報などの重要な情報を流出、紛失することがないよう、外部から完全に独立したスペースが必要です。例えば、オフィスの一角をパーテーションで遮っただけの事務所や、施錠ができない事務所などは独立性が認められず、登録が不可となる場合があります。
業務用の設備が整備されていること
行政書士が業務を行うにあたり、必要な設備が整備されていることも事務所要件のひとつです。具体的には、以下のような設備が求められます。
- 机・椅子(業務用・来客対応用など)
- 書類保管庫・金庫・収納棚
- パソコン
- プリンター・FAX・コピー機
- 電話
- 郵便受け(施錠付き) など
行政書士は開業時にバーチャルオフィスを利用できる?

行政書士は、開業時にバーチャルオフィスを「事務所」として登録申請することができません。その理由は、行政書士会の登録基準において「実態のある事務所」が求められており、バーチャルオフィスでは指定の要件を満たせないためです。
バーチャルオフィスは、事業用の住所や電話番号などのオフィス機能を利用できるサービスであり、業務を行える物理的なスペースはありません。そのため、前述の行政書士の開業時の事務所要件のうち、「業務上の秘密を保持できる独立性があること」と「業務用の設備が整備されていること」に該当しないのです。
各都道府県の行政書士会によっては、事務所要件をまとめた資料に「バーチャルオフィスの利用は不可」と記載されている場合もあります。
バーチャルオフィスのサービスの詳細や、利用時のメリットはこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
公開住所としてのバーチャルオフィス利用は要確認
行政書士は開業時にバーチャルオフィスを事務所として登録申請することはできませんが、「問い合わせ窓口として公開する住所にバーチャルオフィスを利用できないか?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
例えば、開業時に登録申請した事務所が自宅であり、プライバシーの観点から、名刺やホームページなどに自宅住所を記載・公開したくないケースなどです。
こうした「公開住所」としてのバーチャルオフィスの利用可否は、各都道府県の行政書士会によって見解が異なる可能性があります。そのため、バーチャルオフィスの契約前に、所属している行政書士会に問い合わせ、利用可否を確認しておくことをおすすめします。
行政書士がバーチャルオフィスを利用するメリット

行政書士は、所属の行政書士会から「公開住所」としてのバーチャルオフィス利用が認められれば、物理的な事務所と併用してバーチャルオフィスを活用できる可能性があります。バーチャルオフィスは月額数千円前後と比較的安価な利用料金で、住所や電話番号などのオフィス機能の一部を借りられる点が魅力です。ここでは、行政書士がバーチャルオフィスを利用するメリットを確認していきましょう。
プライバシーの保護ができる
バーチャルオフィスを利用することで、自身のプライバシーを保護できます。例えば、自宅を行政書士の事務所とする場合、名刺やホームページなどで自宅住所を公開することに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。バーチャルオフィスの住所や電話番号を利用すれば、不特定多数に向けて個人情報を公開せずに済むため安心です。
信頼性の高い住所を名刺やホームページに利用できる
バーチャルオフィスは、都心やオフィス街など、主要ビジネスエリアや交通の利便性が高い場所に設けられることが多いです。そのような印象の良い所在地を、行政書士の名刺やホームページ、SNSなどに活用することで、顧客や取引先からの信頼性の向上につながります。
秘書サービスや荷物保管サービスを利用できる
バーチャルオフィスの事業者によっては、住所貸しや固定電話番号の発行に加え、「秘書サービス」や「荷物保管サービス」を提供しています。こうしたサービスを利用することで、電話対応や届いた荷物の仕訳・保管・事務所への転送などを、バーチャルオフィスに在籍する秘書に任せられ、業務効率化につながります。
ただし、行政書士には守秘義務があり、特定の荷物や書類は物理的な事務所での保管が義務付けられている可能性があります。バーチャルオフィスの秘書サービスや荷物保管サービスの利用前に、必ず行政書士会に問い合わせ、利用可否を確認しておきましょう。
会議室やオフィス設備が利用できる
バーチャルオフィスは貸会議室や応接室などが併設されている場合があります。こうした貸会議室には、高速なインターネット環境をはじめ、プロジェクターやホワイトボードといったオフィス設備が整っているケースが一般的です。そのため、打ち合わせにバーチャルオフィスの貸会議室を利用することで、都心で交通アクセスが良く、設備の整った利便性の高い環境を顧客や取引先に提供できます。
行政書士が事務所登録できるオフィスの種類

行政書士が開業する際に、事務所として登録申請できるオフィスは以下の3種類です。
- 自宅兼事務所
- 賃貸オフィス
- レンタルオフィス
オフィスの種類によってコストや物件の主な条件などが異なるため、事業の規模や予算にあわせて最適な選択肢を選ぶことが重要です。ここでは、それぞれのオフィスの特徴を詳しく解説します。
| オフィスの種類 | 向いているタイプ | コスト | 登録のしやすさ | 物件の主な条件 |
| 自宅兼事務所 | コストや通勤時間を最小限に抑えたい | ◎ | 〇 |
|
| 賃貸オフィス |
| △ | ◎ |
|
| レンタルオフィス |
| 〇 | 〇 |
|
自宅兼事務所
行政書士は開業時に自宅の一部を事務所として登録することが可能です。自宅であれば、事務所までの通勤が必要なく、事務所用に物件を借りる場合と比べて、コストを大幅に抑えられます。
ただし、自宅に事務所を設ける際には、居住空間と事務所が明確に区分されていることが条件となります。また、自宅が賃貸物件の場合は、物件の所有者や管理会社から、事業用としての利用が許可されていないと、事務所として登録申請できない点にも注意しなければなりません。
賃貸オフィス
オフィス用賃貸物件は、幅広い選択肢の中から、理想の立地や間取りの物件を選べることが特徴です。スタッフを雇い、複数人で業務を進めたい場合も、賃貸オフィスが優先的な候補になるでしょう。行政書士会の規定で、「施錠付きの物件」や「行政書士としての品位を保てる物件」といった条件が定められているケースでは、物件選びに注意が必要です。
また、賃貸オフィスでは多くのコストが発生します。賃貸オフィスの利用を開始する際には、保証金をはじめ、机や椅子、キャビネット、電話などのオフィス設備の準備などに、まとまった初期費用が必要です。固定費として毎月の賃貸料金がかかる点にも留意しなければなりません。
賃貸オフィスの探し方やポイントを詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
レンタルオフィス
レンタルオフィスとは、賃貸オフィスのような不動産の賃貸借契約とは異なり、より細かく区分された執務スペースを契約できるオフィスサービスの一種です。
多くのレンタルオフィスサービスは、施錠付きの専有スペースに加え、机や椅子などのオフィス設備が整っており、時間貸しの会議室も利用できます。都心の交通アクセスの良い立地に拠点があり、賃貸オフィスと比べてコストも抑えられます。
ただし、施錠付きの占有スペースを借りられない場合や、行政書士事務所としての表札の掲示ができない場合などは、事務所としての登録申請が認められないケースがあることに注意しましょう。レンタルオフィスの事業者によって、間取りや条件、サービスなどが異なるため、利用前にしっかりと比較検討することが重要です。
開業を支援するサーブコープのオフィスサービス

「行政書士の試験合格後、一日でも早く事業を本格スタートさせたい」
「一念発起して試験にチャレンジしたが、正直なところ開業資金が十分とは言えない」
「独立開業は初めての経験。不安も多いが独立開業について相談できる環境がない」
行政書士として開業するにあたり、上記のようにさまざまな不安や悩みを抱えている方におすすめできるのが、国内外の主要ビジネス街の一等地に拠点を構える、サーブコープのレンタルオフィスです。国内30拠点、全世界150拠点以上のワークスペースを展開し、どの拠点でも洗練された環境と充実したサポートを提供しています。
サーブコープのレンタルオフィスは、机や椅子といった高品質なオフィス家具や、高速で安全なインターネット環境などのIT設備を完備した、防音対策済・施錠付きの完全個室。行政書士の開業時の事務所としての登記はもちろん、業務に必要な設備の多くが「入居後すぐに利用できる状態」に整えられています。
さらに、高レベルの研修を受けたサーブコープの「秘書チーム」が、開業後の行政書士業務も強力にサポートします。受付や電話での問い合わせ対応などにおける世界最高水準の来客対応をはじめ、郵便物や宅配物の受け取りや慎重な管理、貸会議室の予約まで、幅広く対応が可能です。こうしたサービスをご利用いただくことで、安心して行政書士業務に専念できる環境を提供いたします。
また、サーブコープの拠点の多くは、レンタルオフィスだけでなくバーチャルオフィスやコワーキングスペースも併設しており、出張時の業務にもご活用いただけます。東京23区、横浜、大阪、名古屋、福岡の都市圏で行政書士事務所を構えるなら、ぜひ一度サーブコープのレンタルオフィスをご見学ください。
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よくある質問
行政書士の開業に必要な事務所について、よくある質問を2つピックアップして紹介します。
コワーキングスペースは事務所として登録できる?
コワーキングスペースを行政書士の開業時の事務所として登録することはできません。その理由は、コワーキングスペースが、ホットデスクやプレミアムラウンジエリアを会員で共有して利用するオフィスサービスの一種であり、行政書士の事務所要件である「独立性」を満たせないためです。
オフィスサービスの中でも、独立した専有スペースを利用できるレンタルオフィスであれば、行政書士の開業時に事務所として登録申請できます。
行政書士以外の士業で開業時にバーチャルオフィス利用が制限される例は?
行政書士以外の士業は、職業によってバーチャルオフィスでの開業が許可される場合と、制限される場合があります。例えば、公認会計士はバーチャルオフィスでの開業が可能ですが、弁護士や税理士、社会保険労務士などはバーチャルオフィスでの開業ができません。
特定の士業において、バーチャルオフィスでの事務所登録が制限される理由は、行政書士と同様に、物理的な事務所を設けることや、顧客の高度な情報・秘密を保持できる環境などが求められるからです。
こちらの記事では、公認会計士と税理士の開業とバーチャルオフィス利用について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
(まとめ)新規登録申請は行政書士の「初仕事」
バーチャルオフィスは住所などのオフィス機能の一部を借りられるサービスですが、業務を行える物理的なスペースではないため、行政書士の事務所として登録することはできません。
行政書士として独立・開業する際に必要な事務所の準備を円滑に進めるためには、自宅や賃貸オフィス契約、レンタルオフィスの利用などの選択肢について、それぞれの特徴を把握しておくことが重要です。
行政書士の開業時の登録申請は、まさに「行政書士としての最初の業務」のようなもの。不備なく申請書類が作成できるよう、丁寧に準備を進めましょう。



